ドリフターズのミュージカル人形劇『飛べ!孫悟空』はギャグ満載、豪華スターだらけの名番組だった
ドリフターズの番組といえば『8時だョ!全員集合』や『ドリフ大爆笑』が有名ですが、彼らがミュージカル人形劇に挑んだ『飛べ!孫悟空』も名番組でした。
ピンクレディーや山口百恵も出演!

ドリフターズの仲本工事さんが亡くなり、メンバーは加藤茶さん、高木ブーさんのふたりになってしまいました。ドリフターズ(以下、ドリフ)の番組といえば『8時だョ!全員集合』、『ドリフ大爆笑』が超メジャーですが、ドリフの人形劇『飛べ!孫悟空』を覚えている昭和のファンは多いはずです。放送は1977年10月から1979年3月まで(毎週火曜19時から30分)、全74話、1年半続いたヒット番組でした。
TBSテレビは火曜19時放送のアニメ枠の視聴率が低迷してきたため、人形劇というジャンルで大勝負に出ます。目をつけたのはドリフでした。毎週土曜生放送の『8時だヨ!全員集合』だけでも大変だったドリフでしたが、声優としての出演ならスケジュール的に調整可能として実現したようです。
劇の題材は「西遊記」でタイトルは『飛べ!孫悟空』。人形の顔はドリフメンバーに似せて、下唇が大きい三蔵法師(いかりや長介)、タレ目の孫悟空(志村けん)、メガネをかけた河童の沙悟浄(仲本工事)、太った豚の猪八戒(高木ブー)、オリジナルキャラとしてちょび髭オヤジのカトウ(加藤茶)、そして「ヒハハハ~!」と甲高い声で鳴く馬(ドリフ準レギュラーのすわしんじ※現すわ親治)。この一行が「♪ゴーゴーウエスト!」と足並みそろえ天竺を目指す珍道中です。
番組は、子ども視聴者を飽きさせない工夫が満載でした。7時ちょうどにOP曲「スーパーモンキー孫悟空」が流れ、いきなりピンクレディーが歌って踊ります。曲が終わると今度は「S・O・S」や「ウォンテッド」などの持ち歌に乗せて先週までの劇のあらすじを替え歌にして歌います。続いてストーリーテラー的な役割の小島一慶アナウンサーが、まくしたてる口調で見どころなどをフォロー。そして応援ハガキをくれた子どもたちの名前を次々と読み上げます。そして人形劇がスタート!……だいたいこんな感じで始まります。
三蔵たちが行く先々でトラブルが発生。1エピソードを2、3週で終えてまた旅へ、という流れでした。旅の途中で出会う人物や怪物は人気タレントがモデルで、タモリ、郷ひろみ、泉ピン子、西田敏行、武田鉄矢、山口百恵、野口五郎、伊東四朗、北島三郎……など、当時のスターがエピソード変わりで登場。人形劇なのでご本人は声優だけの出演でしたが「自分の人形を作ってもらえるのがうれしい」と、とても喜ばれたとか。
物語といっても基本はいわばミュージカルコントでした。セリフにはギャグ、ダジャレ、ボケとツッコミ、そして歌がいっぱいでした。歌とは、たとえば「悟空がんばれ!」と叫ぶと動物たちが登場して応援歌を歌うとか、場面転換では突然ピンクレディーやトライアングル(最初はキャンディーズJr.)、あのねのね(初期のみ)が持ち歌やヒット曲を替え歌にして状況説明などをしていました。音楽が頻繁に挿入されるとテンポが出るので、特に子どもがチャンネルを変える隙を与えなかったと思います。
また、劇中ではストーリー上全く関係ない遊びが盛りだくさんで、例えば、事件が発生すると突然「Gメン‘75」のOP風に切り替わったり、人を探す話になるとワイドショー番組の人物捜しコーナーに切り替わったりなど、人形劇なのにパロディーも取り入れて、とにかく何でもありでした。また「全員集合」ではツッコミ役のいかりや長介がセリフでボケたりギャグを飛ばすところが妙に新鮮に感じました。
特撮とも少し違う人形劇を異例のゴールデンタイムで放送した大勝負で、TBSは見事に勝利したと言えるでしょう。この『飛べ!孫悟空』はDVD化されていませんが、動画配信サービスで見ることができます。先日亡くなった仲本工事さんの沙悟浄は、メガネを光らせ「ビカビカビカビカー!」と叫んで頭の皿を飛ばすブーメランが好きでした。
(石原久稔)