犬猿? 最高の理解者? 『鬼滅の刃』冨岡義勇と胡蝶しのぶの関係性を考察
義勇としのぶは、実は会話を楽しんでいる!?
●印象的な、あのやり取りに隠れた思いとは?

感情に蓋をして笑えなくなった「ノースマイル」の義勇と、心の底に積もった怒りに蓋をして「うそ笑顔」を顔に張り付けたしのぶは対照的です。そんなふたりには、那田蜘蛛山で下弦の伍・累(るい)とその家族を倒した後、彼らの「距離の近さ」を感じさせる出来事が起こります。
禰豆子が鬼であることに気付き、倒そうとしたしのぶを義勇が止め、炭治郎と禰豆子を逃がしたのです。この時のしのぶと義勇の「そんなだから、みんなに嫌われるんですよ」「俺は嫌われてない」という会話は、『鬼滅の刃』のなかでも有名で、印象的なやり取りと言えるでしょう。
小柄なしのぶをヘッドロックして止めている義勇と、そんな苦しそうな状態でも、うっすら笑顔のしのぶの姿だけでもおかしいのに、この一連の会話のかみ合わなさは絶妙です。義勇ファンの間では「天然すぎる」と、かなりの「萌え要素」と人気になっています。
ただ、筆者はもしかすると、ここで義勇が言いたかったのは「おれは嫌われるほど、他人とは付き合っていない」ということかもしれないと思うのです。実際、「自分は柱にふさわしくない」と、劣等感や疎外感を抱いている義勇は、柱たちとも距離を置いています。
そして、姉を殺され、性格が変わるほど、つらい思いを抱えた者同士だからこそ、しのぶは義勇の悲しみを十分に理解していて、「付き合わないと嫌われることもある」と、気付いて欲しかったのではないかとも思うのです。その思いが、「刀鍛冶の里」での戦いの後に開かれた柱合会議で、しのぶが義勇へ放った「さすがに言葉が足りませんよ」という叱責につながっていると考えます。
●実は、義勇もしのぶも「楽しい」と思っていた
ちなみに、『鬼滅の刃公式ファンブック 鬼殺隊見聞録・弐』の「柱相関言行録」のコーナーによれば、義勇の「(他の柱との)全体的な打ち解け度数」は30%と柱のなかで最低です……。さらに、蛇柱・伊黒小芭内や風柱・不死川実弥からは、はっきり「嫌い」と言われてしまっています。
実は、この「柱相関言行録」には、気になることが書かれているのです。最年長者であり、みんなが認める「頼れる男」岩柱・悲鳴嶼行冥がしのぶについて、「冨岡と話すのが楽しそう。」、義勇について「胡蝶と話すのが楽しいらしい。」と挙げています。しのぶは、誰と話す時も笑顔なのに、義勇と話す時だけ「楽しそう」だったのは、なぜでしょう?
そして、しのぶの話にもつれない感じの義勇が、「楽しいらしい」というのも驚きます。「らしい」というからには、無口な義勇が悲鳴嶼さんに「胡蝶と話すのは楽しい」と語ったということなのか、もしくは目が見えない分「大勢の人間を心の目で見てきた」という悲鳴嶼さんが、しのぶと話している義勇が楽しそうと見抜いたのかと思うと、驚きは倍増です。
これは、犬猿どころか、お互いへの好意はある(恋まではいかないにせよ)とみて間違いはなさそう。そう思って、これまでのやり取りを見ると、しのぶのかわいさや義勇の無表情の下に隠れた笑顔も、よりイメージが浮かびます。
ちなみに、原作マンガを読むと、意外な「おまけ」があります。那田蜘蛛山の任務に向かう回のおまけページにあった、義勇を「つんつん」するしのぶや、第5巻のカバー下の本体表紙で義勇を「つんつん」するしのぶを見て、「このふたり、もしかして……」と思ったファンもいるかもしれません。このしのぶの「つんつん」は、「壁ドン」や「顎クイ」にも負けていない、愛情表現にも見えます。
※禰豆子の「禰」は「ネ」+「爾」が正しい表記
※煉獄の「煉」は「火+東」が正しい表記
(山田晃子)