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犬猿? 最高の理解者? 『鬼滅の刃』冨岡義勇と胡蝶しのぶの関係性を考察

『鬼滅の刃』の主人公・炭治郎と鬼にされた禰豆子を信じ、鬼殺隊へと導いてくれた水柱・冨岡義勇と、いつも笑顔で毒舌家の蟲柱・胡蝶しのぶの絡みは、とても印象的です。ふたりは犬猿の仲なのか? それとも、実は仲が良いのか? ふたりの関係を考えてみます。

水柱・冨岡義勇と蟲柱・胡蝶しのぶの絶妙なやり取り

無口すぎる水柱・冨岡義勇が描かれたTVアニメ『鬼滅の刃 Blu-ray/DVD Vol.2』 (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
無口すぎる水柱・冨岡義勇が描かれたTVアニメ『鬼滅の刃 Blu-ray/DVD Vol.2』 (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

 映画『ワールドツアー上映「鬼滅の刃」上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』も大ヒット中の、『鬼滅の刃』の主人公・炭治郎は、鬼に家族を殺され、たったひとり生き残った妹・禰豆子も鬼にされてしまいます。そんな炭治郎と禰豆子を信じ、鬼殺隊へと導いてくれたのは、水柱・冨岡義勇でした。

 剣の腕はたしかでイケメンの義勇ですが、口数が少なく無表情なため、何を考えているのかイマイチ分かりません。鬼殺隊の柱たちにもなじんでいるようには見えず、炭治郎と禰豆子の処遇について開かれた柱合裁判では、非難されるシーンも……。そんな義勇との絡みが印象的なのが、蟲柱・胡蝶しのぶです。

 寡黙で表情に乏しい義勇と、いつも笑顔で毒舌家のしのぶ。ふたりは犬猿の仲なのか? それとも、実は仲が良いのか? この記事では、ファンの間では、「ぎゆしの」とカップル的に呼ばれることもある、ふたりの関係を考えてみます。

*この先の記事は、『鬼滅の刃』のまだアニメ化されていないストーリーのネタバレを含みます。ご了承の上お読みください。

●登場シーンから、「特別な何か」を感じさせるふたり

 義勇としのぶが初めてそろって登場するのは、那田蜘蛛山での任務をお館様・産屋敷耀哉から命ぜられるシーンです。笑顔がかわいいしのぶと、涼し気な目元が印象的な義勇。並んで座るふたりの姿は、一対のひな人形を思わせるような美しさでした。しかし、ふたりの関係はというと……。

 しのぶが笑顔で「人も鬼もみんな仲良くすればいいのに」と話しかけても、義勇は彼女の顔も見ずに、「バカなことを言うやつだ」と、取り付く島もない冷たい答えを返します。彼女に対して静かに怒っているのか、嫌っているかのように感じさせます。もっと悪く、「バカにしているのか」と取る人もいてもおかしくない態度です(風柱・不死川実弥なら、きっとこう思いそうです)。

 一方、しのぶはその後のTVアニメオリジナルシーンである、任務地の那田蜘蛛山に向かう道中でも、「せっかく一緒の任務なんですから、仲良くしましょうよ」と、始終無言の義勇に話しかけています。これは、出発前のそっけなさすぎる義勇の態度に対してのイヤミなのか、あるいはよほどの「KYちゃん」なのか、生真面目すぎる「学級委員長タイプ」なのか……と考えても、しのぶの本意をはかり知ることはできません。

 決定的に相容れない犬猿の仲のようにも見えますが、逆に「言わなくても分かる」「何を言っても大丈夫」というような空気を共有する、特別な関係にも見えるふたりです。

●共通点は、「姉の存在」

 義勇としのぶには、いくつもの共通点があります。まず、「姉を鬼に殺され、自分だけが生き残った」こと。そして、それが心にも大きな傷跡を残して、「姉の死後、性格が変わった」こと。「姉の形見」である、「羽織」を身につけているのも共通点です。

 義勇の姉・蔦子(つたこ)は、祝言の前の夜に義勇をかばって鬼に殺されました。蔦子は亡くなった両親に代わって、義勇を育ててくれています。義勇も子供心に自分のために苦労した姉の幸せを喜んでいたのでしょう。

 それが「自分のせいで」「自分の目の前で」壊れてしまったことは、彼の心に大きな傷となり、義勇は「自分が死ねばよかった」という思いを抱くようになったのです。その後、ともに修行した錆兎(さびと)という少年によって、前向きになった義勇でしたが、彼をさらなる不幸が襲い、劣等感や自己嫌悪を抱くように……。

 思い出や、悲しみに蓋をすることで、笑顔にも蓋をしてしまったのです。義勇の羽織は姉と錆兎の形見で作られており、彼は自分の罪をまとっている気持ちでいたのかもしれません。

 一方、しのぶの姉・カナエは、「花の呼吸」を使う花柱でしたが、上弦の弐・童磨によって殺されてしまいました。もともとは勝気な性格だったしのぶですが、姉の死をきっかけに、彼女の「心優しく穏やかな性格」や「鬼と仲良くするという理想」を引き継ぎ、笑顔を絶やさないようになったのです。

 姉の形見の羽織を身に着けることで、そんな姉の思いと、姉を殺した鬼への復讐心を忘れないようにしていたのでしょう。積もった鬼への怒りを笑顔で隠しながら……。

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