『装甲騎兵ボトムズ』放送から40年 主人公とメカはロボットアニメの「常識」を粉砕?
量産型の機体に乗ることで描けた「リアル感」

それでは、タイトルには名を残さなかった主人公ロボについても振り返ってみましょう。
この作品の主人公ロボにあたるのが、キリコが愛用した「ATM-09-ST スコープドッグ」です。その最大の特徴は、作品世界ではもっともポピュラーなATであり、どこにでもある一般的な量産機であること。つまりロボットアニメ定番の「主人公の乗る強力な特別機」ではありません。
むしろ「やられメカ」にあたる存在であり、キリコのスコープドッグが敵の同型機と戦う姿は頻繁にみられました。そういった点では、『機動戦士ガンダム』における「MS-06 ザクII」と同じ存在ともいわれ、リアリティを追求した80年代のロボットアニメの主人公機として、ひとつの到達点ともいえるかもしれません。
作中での扱いもATらしいリアルさを追求した描写が数多く見受けられます。たとえばスクラップのなかから使えるパーツをつなぎ合わせて1台のスコープドッグを作り出すこともたびたびありました。こういった風に簡単に作れることから、キリコがスコープドッグを乗り捨てるという場面もあり、より作品をリアルな感じを描けたわけです。
この主人公が量産型のやられメカに乗ることで、よりその強さが描けるということにもなりました。敵のPSが使う「ATM-09-GC ブルーティッシュドッグ」や「XATH-02 ストライクドッグ」といった高性能機に互角以上の戦いを見せることで、キリコのテクニックが尋常でないことを示せるわけです。
また、キリコがスコープドッグに乗り続けている理由も、「使い慣れているから」というシンプルな理由でリアリティを増していました。そういう点ではリアルを追求しながら、より強力な後継機に乗り込む他のロボットアニメとは一線を画していたのかもしれません。
そういった点では、主人公メカとは思えないほどヒーロー性の薄いデザインであるスコープドッグも、キリコという存在によって『ボトムズ』の主役ロボというポジションを不動のものとしているわけです。
近年ではJR南武線・稲城長沼駅前にて、実物大のスコープドックが展示されていました。4メートルほどの巨大でないサイズで比較的作りやすかったという理由があるにしても、実物大が製作されるほどの人気と注目度があるということでしょう。
この他にもキリコの普段着ているのが、作中でも一般的なパイロットスーツという点も注目するポイントです。主人公のパイロットスーツと言えば、スペシャル感があるのが普通。一般兵士と同じものということは、実際の世界ならともかく、アニメの世界ではほぼありえません。
なぜなら、ヘルメットまでかぶって顔を見せないと、絵的には誰が誰だかわからなくなります。あくまでキリコは一般兵士という部分を貫くということなのでしょうが、それが作品のリアリティをより高めていました。
そんなリアリティのある作品感が多くのファンの心を引き付けたのは当然かもしれません。しかも、リアルさを前面に出したロボットアニメでは珍しいことに女性ファンも少なからずいました。その理由はやはりキリコというキャラの魅力なのでしょう。そういう点では他のロボットアニメにない作風が、本作の成功の原因だったと思います。
(加々美利治)




