「マンガ選び」の道しるべ、4つの「漫画賞」の歩き方 「違い」を知れば見つけやすくなる?
「選考員」を知ることにもメリットが?

●選考者の「好み」に注目したい「このマンガがすごい!」
「このマンガがすごい!」は、宝島社が発刊している同名の書籍で行われているマンガランキングです。2005年より毎年12月、同書の発売をもって「オトコ編」「オンナ編」、それぞれのランキングが発表されています。
ランキングの対象となる作品は、同書発売の前年10月1日から発行年9月30日までに単行本が発売されたマンガで、選考するのは書店員、編集者、評論家や大学のマンガ研究会、各界におけるマンガの識者などで、投票は「オトコ編」「オンナ編」のどちらか(選考者が得意な分野)に限られています。
選考方法は、選考者が対象作品のなかから最もお薦めしたい5作品をランク付けし、1位10点、2位9点、3位8点、4位7点、5位6点として投票します(選考者によって持ち得点が変わることもあります)。その集計によって「オトコ編」「オンナ編」の順位を決定します(補完的なランキングとして「書店員が選ぶ~」「雑誌編集者が選ぶ~」など、選考者別のランキングもあり)。
マンガに接することの多い職種の選考員が多いためか、読者が主体の「電子コミック大賞」「次にくるマンガ大賞」に比べて、青年誌や女性誌など年長者向けの作品もランキングに多く見られるのが特徴です。また連載期間や既刊の巻数に制限がないため『ONE PIECE』や『ゴールデンカムイ』などの定番ヒット作のランクインも見られます。
何よりこのランキングの大きな特徴は、元来マンガの紹介本であることから、ノミネートしている作品についての解説や、選考者によるコメントといった周辺情報が充実していることです。
特に、選考者のコメントやプロフィールに注目すると、自分のマンガ選びの道しるべが見つかるかも知れません。たとえば、自分と好みが似ている選考者がいれば、その選考者が他におすすめしている作品を読んでみるのもいいでしょう。「このマンガがすごい!」は、作品の順位だけでなく、マンガ選びの「ガイド役」を探すこともできる、お得なランキングです。
※過去の受賞作
このマンガがすごい!2023オトコ編 第1位『光が死んだ夏』(モクモクれんKADOKAWA)
このマンガがすごい!2023オンナ編 第1位『天幕のジャードゥーガル』(トマトスープ、秋田書店)
このマンガがすごい!2022オトコ編 第1位『ルックバック』(藤本タツキ 集英社)
このマンガがすごい!2022オンナ編 第1位『海が走るエンドロール』(たらちねジョン 秋田書店)
このマンガがすごい!2021オトコ編 第1位『チェーンソーマン』(藤本タツキ 集英社)
このマンガがすごい!2021オンナ編 第1位『女の園の星』(和山やま 祥伝社)
●愛読書探しに適した「マンガ大賞」
最後に紹介する「マンガ大賞」は、「面白いと思ったマンガを、その時、誰かに薦めたい!」と銘打ち、ニッポン放送のアナウンサー吉田尚記氏を発起人として、2008年に創設された漫画賞です。
運営するマンガ大賞実行委員会は、書店員をはじめとするマンガ好きの有志の団体で、同賞の選考員は、実行委員がマンガに対する熱を感じた人に直接声をかけて選定しているそうです。
興味深いのは、その選考員の選定にあたり、漫画家や編集者など、賞の選考によって直接利害関係が発生する人を除外しているという点です。実行委員会の活動をはじめ、同賞の運営は、すべて無報酬の持ち出しで行なわれているとのことで、選考における公正性を重んじる賞といえるでしょう。
選考対象は、賞開催の前年1月1日から12月31日に出版された単行本のうち、最大巻数が8巻までの作品(電子書籍含む)です。
まず一次選考として各選考員が人にぜひ薦めたいと思う5作品をコメントを付けて選出します。それを集計した得票数10位までの作品が、二次選考のノミネート作品として選出されます。
選考員は二次選考の10作品をすべて読んだ上で、上位3作品を選んで投票。1位3ポイント、2位2ポイント、3位1ポイントとして、全選考員の結果を集計して1位になったものが「マンガ大賞」受賞となります。
賞の傾向としては、厳選されたマンガ好きが選考員となっているからか、大賞、ノミネート作品ともに青年誌や月刊誌など年長のマンガファン向けの作品や、作り込まれた作品、読み応えのある作品が多く見られます。
巻数制限はありますが、発表が月刊ペースのため複数年にわたり同賞にエントリーされる作品が散見され、かつてエントリーされた作品の作者の新作が取り上げられるなど、その年度の流行を追いかけるというよりも、地力のある作品や漫画家さんを長く応援している賞……といった印象です。
今年3月に「マンガ大賞2023」を受賞した『これ描いて死ね』の作者・とよ田みのる先生も、前作の『金剛寺さんは面倒臭い』が2019年にノミネートされています。じっくりと愛読できる作品や漫画家さんを探すのに適している賞ではないでしょうか。
※過去の受賞作
マンガ大賞2023『これ描いて死ね』(とよ田みのる 小学館)
マンガ大賞2022『ダーウィン事変』(うめざわしゅん 講談社)
マンガ大賞2021『葬送のフリーレン』(原作:山田鐘人 作画:アベツカサ 小学館)
(倉田雅弘)







