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「マンガ選び」の道しるべ、4つの「漫画賞」の歩き方 「違い」を知れば見つけやすくなる?

マンガ作品の数も情報の量も膨大になりつつある現在、定期的に開催されている「漫画賞」は、自分が読みたいマンガを探すのに役立つ道しるべになります。が、選考者や投票方法にはそれぞれ違いが。比較的最近創設された4つの漫画賞を解説します。

読者が投票する漫画賞は、トレンドを反映

まもなく投票が締切となる「次にくるマンガ大賞2023」
まもなく投票が締切となる「次にくるマンガ大賞2023」

 一般読者の投票で受賞作品が決まる「次にくるマンガ大賞2023」の投票締切が2023年7月10日(月)に迫っています。いまや漫画はかつてない全盛の時代で、紙と電子を合わせた2022年のコミック市場(推定販売金額)は、4年連続で過去最高額更新の6,770 億円(出版科学研究所「出版月報」2023.2.24)です。媒体も、雑誌のほかにマンガサイトやアプリ、SNSなど多岐にわたり、もはや把握できない数の作品が日々発表されています。

 情報量が多すぎるゆえに、注目作品をランキング形式で審査する漫画賞を参考に、読むマンガを決める方も多いと思います。しかし、ひと口に漫画賞と言っても、対象とする作品や選考者、審査基準は賞によって異なります。そこで今回は、比較的最近創設された4つの漫画賞、「電子コミック大賞」「次に来るマンガ大賞」「このマンガがすごい!」、そして「マンガ大賞」について、それぞれの選考過程や選考者、最近の受賞作を紹介します。

●出版社推しの作品がわかる「電子コミック大賞」

 最初に紹介するのは、2018年に創設された「電子コミック大賞」、正確には「コミックシーモア みんなが選ぶ電子コミック大賞」です。

 電子書店「コミックシーモア」が主催し「出版社の想いと読者の皆さまとの出会いの奇跡」と銘打たれたこの賞は、まず出版社側が推薦する作品を、「男性部門」「女性部門」「異世界コミック部門」「ラノベ部門」「BL部門」「TL部門」の全6部門のどれかにエントリーします。
そして一般読者がそれぞれの部門のエントリー作品のなかから「次にヒットする」と思った作品に投票します(ひとりあたり1部門につき1回、最大6部門)。その票数で各部門賞と部門をこえた大賞を決めるシステムです。ちなみに2023年2月に発表された同賞では、出版社56社から110の作品がエントリーしていました。

 投票は特設サイトを通じて行われ、コミックシーモアの会員以外も参加できます。賞の候補となるのが、すでに話題になっていたり、ヒットしている作品ではなく、出版社側が「もっと読んで欲しい」と推薦する作品ということで、いち早く未来のヒット作を見つけたい人にお薦めの賞と言えるかもしれません。

 また細かなジャンル分けも同賞の特徴で、「異世界部門」や「BL部門」「TL部門」など、他の賞で触れられることの少ないジャンルのお薦め作品を探すのに役立ちそうです。人気作がマンガされるケースが多く、読者層がマンガと近接している「ライトノベル」をフォローしているのも大きな特徴です。

※「電子コミック大賞」過去の受賞作
電子コミック大賞2023『鬼の花嫁』(原作:クレハ 作画:富樫じゅん スターツ出版)
電子コミック大賞2022『只野工業高校の日常』(小賀ちさと 集英社)
電子コミック大賞2021『十億のアレ。?吉原いちの花魁?』(宇月あい ソルマーレ編集部)

●読者が候補作をエントリーし投票する「次にくるマンガ大賞」

 次に紹介するのは、2014年に創設されたWebマンガサービス「ニコニコ漫画」と情報誌「ダ・ヴィンチ」共催の「次にくるマンガ大賞」です。紙媒体をメインに連載している「コミックス部門」と、Web媒体をメインにしている「Webマンガ部門」の2部門で、対象となるのは候補作のエントリー(登録)開始時点で、その前年1月1日以降に連載開始した作品、もしくは紙媒体のコミックス既刊が5巻以内の作品で、R18作品は対象外です。

 選考方法ですが、まず一般読者が「次にくる」と思う作品を同賞の公式サイトにエントリーします。コミックス部門、Webマンガ部門、それぞれ最大5作品のエントリーが可能で、今年5月に「次にくるマンガ大賞2023」にエントリーされた作品は5,170を数えます。

 そのなかから特に人気の高かったコミックス部門40作品、Webマンガ部門60作品を公式サイト上でノミネート作品として発表し、さらに一般読者の投票によって各部門の大賞を決めていきます。「すべてのマンガファンによる推薦と投票を通して“次にブレイクしそうなマンガ”を発掘し紹介することを目的」として創設されただけあって、エントリー作品から大賞決定まで基本的に一般読者が主体となって選考が進み、候補作も投票者も多い一般的な好みが反映されやすい賞といえます。

 そのためか授賞作、ノミネート作品ともにメジャーなマンガ雑誌やWebサービス・アプリで展開し、まさにブレイク寸前の空気を漂わせている作品が多く、実際にアニメ化された受賞作品も多いです。その一方で、昨年はSNSが初出となった『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』がWebマンガ部門で大賞を受賞したように、時流に聡(さと)い点も大きな特徴です。

※過去の受賞作
次にくるマンガ大賞2022コミックス部門『メダリスト』(つるまいかだ 講談社)
次にくるマンガ大賞2022Webマンガ部門『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』(地主)
次にくるマンガ大賞2021コミックス部門『【推しの子】』(原作:赤坂アカ 作画:横槍メンゴ 集英社)
次にくるマンガ大賞2021Webマンガ部門『怪獣8号』(松本直也 集英社)
次にくるマンガ大賞2020コミックス部門『アンデッドアンラック』(戸塚慶文 集英社)
次にくるマンガ大賞2020Webマンガ部門『僕の心のヤバイやつ』(桜井のりお 秋田書店)

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