物足りない? ほっこり? 100巻以上続いた長寿マンガの「意外な最終回」3選
近年、100巻を超えるマンガも増えてきましたが、ひとつの作品をそれだけ続けるのはとてつもない偉業であることに変わりはありません。しかし、物語の結末についてちゃんと覚えている人は少ないのではないでしょうか。今回は、100巻越えの長寿マンガ3作の最終回について振り返ります。
あらかじめ用意していたランキングに「最後まで期待を裏切らない」

100巻以上続いた長寿マンガは、長い連載であるがゆえに途中で離脱してしまい「特定のエピソードは覚えているけど結末が思い出せない」ということもあるでしょう。今回は、100巻以上続いた名作マンガ3作の、意外な最終回について振り返ります。
●『こちら葛飾区亀有公園前派出所』
1976年から2016年まで「週刊少年ジャンプ」にて連載されたマンガ『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(秋本治)は、コミックス200巻を達成し、当時のギネス世界記録にも認定された言わずと知れた名作マンガです。
お金儲けが大好きな主人公の警察官・両津勘吉と、彼を取り巻くキャラクターたちによるドタバタ劇やマニアックな分野のビジネスの小ネタは、現在も色濃く記憶に残っているのではないでしょうか。
『こち亀』の最終話の日程が決定すると、当時の読者の間では「両さんと麗子は結婚しそう」「登場人物のその後を描きそう」などと、さまざまな最終回予想があげられていました。そんななか最終話「40周年だよ全員集合!」では、「こち亀復活キャラベスト10」という企画が描かれます。まさかの「キャラランキング」ネタに、驚いた読者もいたのではないでしょうか。
「こち亀復活キャラベスト10」は、30周年記念の際にも開催したことがある企画です。ところが30周年のときとは違い、最終回では読者投票なしのキャラクター発表となりました。そのため両さんは大原部長に、「なぜランキングがわかるのか」と問い詰められてしまいます。
その引き合いに両さんは70年代のラジオで放送された「電話リクエスト」についても、実はアンケートを取っていなかったという都市伝説を披露し、難を逃れようとしました。なんでもありの演出が続き、最後まで「両さんらしさ」が前面に出た最終回です。
ちなみに最終回が掲載された週刊少年ジャンプ2016年42号は両さんのトレードマークのM字の眉毛が40個隠されているという企画がおこなわれ、『ONE PIECE』や当時連載されていた『トリコ』などの人気作にも隠されていました。このように『こち亀』は、名だたる漫画家も参加したイベントで大々的に締めくくられたのです。
●『あぶさん』
野球マンガの巨匠・水島新司先生の作品『あぶさん』は、1973年から2014年までの41年間にわたって、青年コミック誌「ビッグコミックオリジナル」(小学館)にて連載され、コミックス全107巻まで発売された長寿マンガです。南海ホークスに所属(福岡ソフトバンクホークス時代まで現役を続ける)する酒好きの打者・景浦安武(通称:あぶさん)のプロ野球人生を、現実のプロ野球とリンクさせて描き人気を博しました。
そんな本作の最終回は、すでにプロ野球選手を引退したあぶさんがお世話になった人たちを訪ねていくという形で物語を締めくくっています。プロ野球人生を終えたあぶさんは、初期から登場する女流作家で代々続く酒造所の娘・武藤ワカ先生のもとへ来訪しました。
そこでワカ先生から新酒「大吟醸 あぶさん」を受け取ったあぶさんは、母親とその新酒を飲み、小学生のころに野球をはじめたきっかけをくれた恩人・有野さんの墓を訪れ、感謝の言葉を述べます。そして最後の一コマでは「大吟醸 あぶさん」とお猪口が描かれ、「最後の1杯はファンの皆様へ……」というコメントで物語が完結しました。
当時、最終回を読んだ読者からは「最後まで夢を見させてくれてありがとう」「長い間お疲れ様でした」といった、水島先生を労う言葉もあがっています。最後にお酒とともに、物語のはじめを振り返るといういかにも『あぶさん』らしい締めくくりだったといえるでしょう。
ちなみに、水島先生没後の2023年には最終巻に掲載されていない読切や単行本未収録作品を詰め込んだ『あぶさん 球けがれなく道けわし』が9年ぶりに発売され、多くのファンを魅了しています。
●『あさりちゃん』
『あさりちゃん』は、1978年から2014年までの36年間、学習雑誌「小学二年生」(小学館)にて連載され、コミックス100巻まで続いた室山まゆみ先生によるギャグマンガです。小学4年生の主人公・浜野あさりと、姉・浜野タタミのふたりが、学校や家族をドタバタ劇に巻き込んでいく物語に、たくさんの読者が夢中になりました。
『あさりちゃん』の最終回は、タタミの小学校の卒業式を中心に描いています。意外にも卒業式で号泣する姉に対し、妹であるあさりは、2年後の卒業祝いを要求するプラカードを準備するという早すぎる準備をしていました。
そして、「永遠の小学4年生」だと思われていたあさりが、小学5年生に進級し、物語が完結します。
また、コミックスでは最終回について、別のパターンも掲載されていました。もうひとつの最終回は、病弱で入院していたあさりが『あさりちゃん』を、ベッドの上で全て描いたという衝撃的なオチです。
読者応募の案のひとつなのですが、当時ネット上では「おまけページで良かった」「この終わり方はゾッとする」と話題になりました。本編が割とあっさりとした内容で終わりを迎えていたため、別の最終回に驚いた人もいたでしょう。
(LUIS FIELD)