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「タイトル詐欺」だった80年代ファミコンソフト3選「想像の斜め上」「女児が泣く」

面白そうだから買ったのに、実際に遊んでみたら想像していた内容と違って驚いた……。タイトルやパッケージとゲーム内容が違いすぎた、1980年代のファミコンソフトを振り返ります。

買って後悔? タイトルと中身のギャップに仰天したファミコンソフト

『CITY ADVENTURE タッチ MYSTERY OF TRINGLE』(東宝)
『CITY ADVENTURE タッチ MYSTERY OF TRINGLE』(東宝)

 今も昔も各メーカーから数々のゲーム作品が発売されていますが、30年~40年前と現代で大きな違いがあるとすれば、新作ゲームソフトに関する「情報収集の手段」が挙げられるのではないでしょうか。

 今であれば検索エンジンや動画サイトなどを使っていろんな情報をキャッチできますが、1980年代~1990年代前半は気軽に扱えるようなインターネット環境もあまり普及しておらず、情報収集にも限度がありました。また、商品パッケージやタイトル名だけで内容を判断し、気になったゲーム作品を買うという「ジャケ買い」も多かったように見受けられます。

 そのぶん、「キャラクターの見た目に引かれて購入した」「タイトルの響きが何となく気になった」などの理由で手に取ったものの、実際に遊んでみたら想像の斜め上をいく内容で驚いた……という経験がある方も多いのではないでしょうか。

 そこで今回は、1980年代に発売されたファミリーコンピュータ(以下、ファミコン)用ソフトのうち、タイトルと中身のギャップがとりわけ大きかった作品を3本振り返ります。

●『シャーロック・ホームズ 伯爵令嬢誘拐事件』

 1986年12月にトーワチキからリリースされた『シャーロック・ホームズ 伯爵令嬢誘拐事件』。タイトル名の通り、本作はアーサー・コナン・ドイルの小説シリーズ「シャーロック・ホームズ」(以下、ホームズ)を題材としており、原作のその後を描いたオリジナルストーリーが展開されます。

 商品パッケージの中央には、パイプをくわえるホームズ(と思わしき男性)の横顔がプリント済み。さらにロゴや装飾も含めて格調高い作りで、見るからに「ホームズがモチーフのアドベンチャーゲーム(以下、ADV)なのでは?」と予想させる仕上がりです。しかし、実態はADVではなくまさかのアクションゲーム。しかも、ほとんど推理要素もありませんでした。

 本作の舞台はイギリス。プレイヤーはシャーロック・ホームズとなり、悪の組織「パパイヤ団」にさらわれた「マーガレット令嬢」を救うべく、ロンドンやバーミンガムなどの各地で情報集めに奔走します。

「情報を集める」といっても、じっくり聞き込みや事件現場の調査を行うわけではありません。本作で何よりも頼れるのは「己の武力」。無限に繰り出すことができるホームズのキック攻撃で敵キャラクターを懲らしめ、敵がダウン時に口走る断片的な情報を集めることでゲームが進展していきます。原作で丁寧に描かれていた推理パートはほぼ存在せず、基本的に肉弾戦ですべて解決するという、漢(おとこ)らしい仕様です。しかし、ピストルを入手すると一転、遠距離から敵を倒し続けて進むという極端なゲームバランスも垣間見えます。

 なぜかアクションゲームに振り切ってしまい、粗の多さからいわゆる「クソゲー」の1本として数えられることも少なくない本作。続編の『名探偵ホームズ 霧のロンドン殺人事件』などはコマンド選択式ADVとして登場したものの、それゆえに本作がかえって悪目立ちする結果となりました。

●『CITY ADVENTURE タッチ MYSTERY OF TRIANGLE』

 高校生の青春群像を、野球を通して描いた、あだち充先生による不朽の名作『タッチ』。その主役を務める双子「上杉達也」「上杉和也」、ヒロインの「浅倉南」が異世界を冒険するアクションゲームを皆さんはご存じでしょうか。

 その名も『CITY ADVENTURE タッチ MYSTERY OF TRIANGLE』。本作は『タッチ』原作ゲームとしては2作目に該当するものの、「野球をはじめ甘酸っぱい青春劇を思わせる演出は含まれていない」というのがポイントです。

 本作の大きな目的は、達也・和也・南の3人がかわいがっているペット犬「パンチ」の仔犬の救出。と言っても仔犬は街のどこかに隠れているのではなく、不可思議な現象が多発する異世界に迷い込んでしまっています。プレイヤーは達也と和也を操作し、遭遇する敵キャラを倒しながら仔犬を探し出すことになります。

「原作とゲーム内容が全く違う」。こうした事例は版権作品を題材にしたゲーム作品にありがちですが、『CITY ADVENTURE タッチ MYSTERY OF TRIANGLE』はその類においても突出した仕上がりだったといって良いでしょう。ほんの形ばかりの野球要素というべきバットやボールで敵を殴りつけ、勝手にダメージを受けてへたり込む南に翻弄(ほんろう)されながら仔犬を求めて走り回る……。タイトルを見て「『タッチ』が題材のアクションゲーム」だと理解したうえで遊んでも、手放しに面白いと評価することのできない迷作っぷりでした。

現在は「リカちゃんの憧れの存在」として商品展開しているジェニー 画像は「#Licca #ジェニー(ハッシュタグリカ ハッシュタグジェニー)」(タカラトミー)
現在は「リカちゃんの憧れの存在」として商品展開しているジェニー 画像は「#Licca #ジェニー(ハッシュタグリカ ハッシュタグジェニー)」(タカラトミー)

●『失われたメッセージ ロストワード・オブ・ジェニー』

 トラップ満載の海賊船やお化け屋敷にひとりで潜り込み、危険な敵キャラをパンチ&キックで撃退しつつ先へ進む。このように書けば、危険を顧みない勇敢な冒険家が主人公の作品だと思われるかもしれません。しかし、その実態は冒険家とは全く異なります。というのも、『失われたメッセージ ロストワード・オブ・ジェニー』(以下、ロストワード・オブ・ジェニー)のモチーフとは、タカラ(現:タカラトミー)が販売する着せ替え人形「ジェニー」なのです。

「ミステリータウン」に住むジェニーはある日、自身が出演する予定だったミュージカル公演が突然中止になってしまったことを知ります。事件を影から操っているのは「BB教団」と呼ばれる怪しげな組織。ジェニーはミュージカル公演を再開させるべく、単身でBB教団のアジトへ乗り込む決意を固めるのでした。

「ジェニーが主役なら、きっと中身は着せ替えが楽しめ、ポップなゲームになっているはず」。こうしたユーザーの予想を裏切るかのごとく、本作では最序盤から難易度の高いアクション要素が立ちはだかります。

 拠点となるミステリータウンはギャングをはじめ、厄介なお邪魔キャラが徘徊(はいかい)していることにくわえ、ジェニーはなぜか反撃することができません。ひたすら敵の突進をかわしながら、各ステージの入口を探さなければならないのです。そしてステージの雰囲気も、題材がジェニー人形であることを鑑みると違和感をおぼえるものが多め。さらにステージクリア後に待ち受ける大ボス「COW HEAD」はガイコツになった牛型モンスターということもあり、ジェニーとの対比でよりアンバランスさが目立っています。

 本作のタイトル画面で映し出されるドット絵のジェニーはとてもキャッチーで、カセット本体もピンク色のため華やかな見栄えです。それだけに本編の難しさ、不穏な空気感を醸(かも)し出すグラフィック部分に首を傾げたくなる一作です。

(龍田優貴)

【画像】え、パッケとゲーム違わない? コチラが「パッケージ詐欺」なファミコンゲームです(4枚)

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