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「Zよりアレックスの方が推力オバケ!?」世代進むもMSスペックはそう伸びていないワケ

なぜ「あえてスペックを抑える」のか?

「EX-Sガンダム」の後背。超重装をものともしない推力オバケ。BANDAI SPIRITS「HG 1/144 Ex-S ガンダム」 (C)創通・サンライズ
「EX-Sガンダム」の後背。超重装をものともしない推力オバケ。BANDAI SPIRITS「HG 1/144 Ex-S ガンダム」 (C)創通・サンライズ

 なぜ、あえてスペックを抑えるようなことをしているのか、その答えは「ミノフスキー粒子」の存在が関係すると考えられます。

『機動戦士ガンダム』の劇中では、「高熱源体」の接近をセンサーが感知し、MSを発見するという描写が見られます。巨大な推力も、高すぎるジェネレーター出力も「高熱源体」となる理由そのものです。

 一方、MSが宇宙戦闘機に勝る「白兵戦用機動兵器」であり続けられる理由は、「ミノフスキー粒子により、遠距離でのレーダーが機能しなくなることで、誘導ミサイルや長距離ビーム砲による狙撃ができなくなること」と説明されています。

 つまり、「νガンダム」の約4倍のジェネレーター出力と、12倍の推力を持つ「EX-Sガンダム」は、センサーにより遠距離で容易に発見され、誘導ミサイルや艦砲射撃での攻撃を受けやすいということです。

 実際『機動戦士ガンダム』では、ジェネレーター出力14万kw、推力58万kgを誇る「ビグ・ザム」に対して、地球連邦軍の戦艦、巡洋艦の砲撃はほぼ命中しています。

「発射した瞬間に命中」する宇宙艦艇のビーム砲は、推力が高い機動兵器にとっても脅威であり、センサーに感知されたら即撃墜もあり得るということです。「ビグ・ザム」「デンドロビウム」「EX-Sガンダム」が、ビームバリアによる対ビーム兵器防御を備えているのは、発見されやすさと無縁ではないでしょう。

 また、高すぎる推力は「曲がれない」「止まれない」リスクがあります。MSは手足による姿勢制御(AMBAC)が可能とはいえ、基本的に「スラスターを吹かして得た速度」を打ち消すためには「止まりたい方向へのスラスター噴射」が必要となります。

 ミノフスキー粒子で有視界戦闘を強いられる宇宙世紀の世界で、撃破すべき敵MSを発見した際に、たとえ敵の12倍の推力を持っていても、自分の速度を落とさなければ白兵戦に持ち込むことは困難です。速度を落とそうとしてスラスター噴射をすれば「高熱源体」の原因となりますから、そこで敵MSや艦砲による遠距離射撃を受けやすくなるわけです。

 これを避けるためには「母艦からカタパルト射出することで、MS本体からのスラスター噴射を最小限にし、基本的には慣性で移動、方向転換は手足によるAMBAC、敵と白兵戦に持ち込む際や、防御行動時以外はなるべくスラスターを噴射しない」といった運用が基本になるでしょう。

 この仮定に基づき、「ガンダム」と「デンドロビウム」が交戦したと想定してみます。

 28倍のジェネレーター出力、40倍の推力を持つ高熱源体の「デンドロビウム」は、「ガンダム」に遠距離で感知され、先制攻撃を受けます。「ガンダム」の武器が実弾の「ハイパーバズーカ」なら「デンドロビウム」は甚大なダメージを受けることでしょう。一方、「デンドロビウム」は推力もジェネレーターも小さな「ガンダム」をすぐには発見できません。

 ちなみに、現実世界における人類の乗りもので一番速いのは「アポロ宇宙船」で、秒速11.08kmです。仮に「デンドロビウム」がこの速度で「ガンダム」に接近した場合、センサー有効半径が10kmであったとしても、1秒も感知できないで通り過ぎることになります。そして減速しなければ、「ガンダムのいそうな辺りにメガ・ビーム砲やマイクロ・ミサイルをばら撒く」くらいしかできないわけです。

「デンドロビウム」が「ガンダム」を射撃するためには、相対速度を落として、センサーに捉えなければなりませんが、それをすれば「ガンダム」は「デンドロビウム」に接近して、白兵戦を挑めます。パイロットが「アムロ」なら、「ビームサーベル」で切り刻まれそうです。

 そう考えるなら、「高ジェネレーターで高推力の機体は、発見されやすく、かつコストが高いだけでなく、戦闘効率も悪いので、ほどほどのスペックのMSを多数配備した方が強い」という考え方は成り立ちます。

 これに対して、アナハイム内には「ニュータイプやエースの技量、あるいは高性能コンピューターの補助により、高機動、高火力機は使いこなせる」という意見もあり、その方向性で試作したのが「EX-Sガンダム」で、これがうまくいかなかったのでしょう。

 そうした理由で「νガンダム」以降は、過剰スペックの機体はほとんど作られず、機体規模に見合う「白兵戦を挑みやすく、敵に発見されにくい性能バランス」の機体が多く作られるようになったのだと考えられます。

 この「スラスター推力を上げてもあまり意味がないので、以後は抑えよう」という発想と潮流は、宇宙世紀0083年の「デラーズ紛争」を戦訓としたものなのでしょう。

【画像】こちらが順当にスペックアップしていったワケではない歴代「ガンダム」タイプMSです(14枚)

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