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『仮面ライダーゼロワン』放送開始から5か月 見えてきた「映し出されるもの」

『仮面ライダーゼロワン』が映し出すものとは

『仮面ライダーゼロワン』 (C)2019 石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映
『仮面ライダーゼロワン』 (C)2019 石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映

 さて、そんな『仮面ライダーゼロワン』が映し出すのは人間とAIの共存だけではありません。本作の先進性は、AIの普及に伴う功罪の描写に加え、ラーニングを通して職能や戦闘技術を独自に学習する”AIの成長”にあると筆者は考えています。

 警備員に寿司職人、声優に看護師など、これまで本編にはさまざまな職業に従事するヒューマギアが20体近く登場。その多くが前提としてプログラムされた目的を足がかりに、独自の成長を遂げているのです。

 例えば第7話「ワタシは熱血ヒューマギア先生!」に登場した坂本コービー。彼は中学校で運用されている教師型ヒューマギアで、放課後は男子バスケットボール部のコーチとして生徒の練習を厳しく指導。しかしあまりに熱が入ったのか、規定の時間を超えたハードな練習メニューを生徒に課しており、この働きを良く思わない他の教師や保護者から疎まれています。

 しかしこの坂本コービーの行動は、「絶対に試合で勝ちたい」という生徒の想いに応えて生まれたもの。日々の指導中に繰り返したラーニングがトリガーとなり、単なる弱小バスケットボール部の見守りロボットではなく、時に人の心を動かす、人間以上に熱いヒューマギアへ変化しました。

 また戦闘技術の学習という点では、物語の序盤から或人たちの前に立ちはだかった暗殺ちゃんも見逃せません。何度も何度もトドメを刺されて爆発四散するも、激しいバトルを繰り広げる度にアーマーパーツや武装が増加。第12話「アノ名探偵がやってきた」では、強化フォーム実装前のゼロワンや仮面ライダーバルカンを追い詰める程にパワーアップを果たします。

 倒される度にラーニングを行い、その経過を踏まえて顔つきや言動が段々と変わっていった暗殺ちゃん。最期はシャイニングホッパーの前に敗北しましたが、その様子はいつか未来で訪れるかもしれないシンギュラリティ(技術的特異点)をリアルに映し出していたのではないでしょうか。

 放送開始から約5か月を迎え、さらに物語の深化が期待される『仮面ライダーゼロワン』。或人は社長としてどのような人生を歩むのか、ヒューマギアとの共存や滅亡迅雷.netとの戦いはどう紡がれるのか。今後の展開に目が離せません。

(龍田優貴)

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