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暴力、侵略… 悪行の限りを尽くす「悪のカリスマ」は、なぜ好かれてしまうのか

「週刊少年ジャンプ」で大人気を獲得し、連載終了後もアニメなどが作られる作品には魅力的な悪役が登場します。この記事ではジャンプマンガの悪のカリスマを3人選んでみました。あなたは誰に共感しますか。

主人公よりも悪役に共感する?

ディオ(画像:左上)が描かれた「ジョジョ~その血の運命(さだめ)~」CDジャケット (C)RS(ワーナー・ホーム・ビデオ)
ディオ(画像:左上)が描かれた「ジョジョ~その血の運命(さだめ)~」CDジャケット (C)RS(ワーナー・ホーム・ビデオ)

 少年マンガには魅力的なライバルや強大な敵が欠かせません。悪役ながらも芯の通った主張や生き様に魅力を感じる方も多いでしょう。では、悪役のどこに魅力を感じるのでしょうか。

●ディオ

「悪のカリスマ」といえば『ジョジョの奇妙な冒険』の「ディオ」を外すわけにはいきません。彼の魅力は悪であることを肯定している点にあります。自分の本質が社会に不適合だと悟り「悪として生きるしかない自覚」があるものにとって、悪を肯定し自由に振る舞うディオの存在は救いです。

 ネットミームの影響もあってか、支配と暴力イメージが強いディオですが、実は精神的な成熟に伴って求めるものが変化しており、極めて人間的で奥深い面があります。第一部のディオは養子になった「ジョースター家」の財産を乗っ取ることを目的としていました。しかし悪事が露見すると石仮面の力で吸血鬼になり、今度は無敵の肉体で他者を屈服させようとします。目的が金銭から支配欲へと変わったのです。

 また、「ジョナサン」に敗れてから数百年後の現代に復活すると、今度はスタンド能力に目覚めて恐怖の克服、そして「天国」を目指します。

「俺は恐怖を克服することが「生きる」ことだと思う 世界の頂点にたつものは! ほんのちっぽけな「恐怖」をも持たぬ者!」

 第三部のディオは不老の肉体や時間を止めるスタンド能力に加え、膨大な財宝を所持しています。この時点でディオが欲しいものをすべて手に入れたのです。もしも「承太郎」の母「ホリィ」にスタンドの悪影響がなければ復活を悟られることなく、「ジョースター」一行に命を狙われることもなかったでしょう。

 そんなディオの深みが増したのは第五部です。「プッチ神父」の回想において、ディオはこう語っています。

「幸福とは無敵の肉体や大金を持つことや人の頂点に立つことでは得られないというのはわかっている」「真の勝利者とは天国を見たもののことだ……どんな犠牲を払っても私はそこへ行く」

 復活後、すべての欲求を満たしたディオは、自分が真に求めているのは幸福だと悟りました。プッチ神父との会話は作劇上の後付け設定かもしれませんが、ジャンプマンガにおいて、反社会的行動をともなう個人的欲求の充足だけでは、真の幸福に辿り着けないと悟った悪役は稀です。ディオを除けば『封神演義』の「妲己(だっき)」くらいではないでしょうか。

【画像】うわ、嫌いかも… これは「絶対に許せない」悪役です(4枚)

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