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『ガンダム』お子様にはちと難しいカムラン・ブルームのカッコよさ その成長ぶりに涙

ミライがカムランを拒絶した3つの理由

カムランの「逆シャアの後」が語られる『機動戦士ガンダムUC 虹にのれなかった男』。表紙はブライト シナリオ:福井晴敏/コミカライズ:葛木ヒヨン(KADOKAWA)
カムランの「逆シャアの後」が語られる『機動戦士ガンダムUC 虹にのれなかった男』。表紙はブライト シナリオ:福井晴敏/コミカライズ:葛木ヒヨン(KADOKAWA)

●どうしてミライはカムランを受け入れなかったのか

 どうしてミライはカムランを拒絶したのでしょうか。まず、「そもそも好きじゃなかった」。身も蓋もありませんが、これは大きな理由でしょう。

 カムランが「父の力」に頼ってばかりいたのも、ミライを苛立たせたはずです。現実世界でも父親頼りの大人の男は情けなく見えるもので、そしてそもそも『ガンダム』の世界は、大人たちへの不信がベースにあります。大人の乗組員がいないホワイトベースで奮闘してきたミライにとって、父のことばかり口にするカムランは不甲斐なく映ったことでしょう。「お父様、お母様によろしく」は痛烈な別れの言葉だったのです。

 そしてもっとも大きな理由が「戦争への関わり方」の違いです。ミライはホワイトベースで戦場の修羅場を何度もくぐり抜けてきており、一方のカムランは安全な中立地帯にいました。ミライがカムランに「あなたは戦争から逃げすぎて、変わらなすぎているのよ」と告げる場面があります。また、『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』(著:安彦良和)では、ミライがカムランについて「戦争を自分とは関係のないもののように考えてる」と語る場面がありました。カムランには戦争についての当事者性が欠けており、戦争を自分ごととして考えているか、そうでないかはミライにとって大きな問題だったのです。

 カムランはミライへの一途な愛を捧げていたものの、自分から能動的に動くことのない男でした。戦争にも関心を持っていません。ふたりは戦争がなければ見合いで結ばれたかもしれませんが、完全に心はすれ違っていました。しかし、カムランは最後にようやく自分で動き、自分の命を張ってみせます。だからミライは最後に別れの言葉ともに感謝の言葉を述べたのです。

 戦争は容赦なくふたりを引き離します。戦場に出ていくホワイトベースとサイド6へ帰っていく宇宙艇からそれぞれ見つめ合う別れのシーンは、そのことを映像で端的に示していました。

●『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』でのカムラン

 ここからがカムランのいいところです。カムランはテレビシリーズの9年後に公開された映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』に驚きの再登場を果たします。

 格段に出世し、地球連邦政府の会計監査局の代表として登場したカムランは、スペースコロニー「ロンデニオン」で行われた地球連邦政府とネオ・ジオンの和平交渉に立ち会い、小惑星「アクシズ」がネオ・ジオンに有償で譲渡されることを知ります。代金である金塊をチェックするのがカムランの役割でした。

 しかし、その場にいたネオ・ジオン総帥「シャア・アズナブル」を見て、カムランは直感で彼と彼らネオ・ジオンの裏切りを看破します。カムランはロンド・ベル隊司令に就任していたブライトに面会し、シャアがロンデニオンにいることを報告、さらにシャアの陰謀を止めるため、核弾頭を15発もブライトに託しました。露見すれば終身刑レベルの犯罪行為でしたが、そのような恐れをぶっちぎって行動を起こしたのです。かつての恋敵を心から信用しているところにもグッときます。

 もし、カムランが行動を起こさなければロンド・ベルは敗北し、シャアの「アクシズ落とし」は成功していたかもしれません。地球にいるミライは無事では済まないでしょう。「私はミライさんに生きていてほしいから、こんなことをしているんですよ」。こうさりげなく言うカムランがとてもカッコよく見えました。

●カムランは変わった

 かつて「変わらなさすぎている」とミライに言われたカムランでしたが、『逆襲のシャア』では大きく変わっていました。非常に能動的な男になっていたのです。むろん、「父の力」など関係ありません。自分の責任で行動し、自分の役割を果たしています。戦争に対する当事者意識も芽生えていました。

 カムランはミライとの出会いと別れを自分の糧にして、大きく成長したといえます。けっして最初からカッコいい男だったわけではありません。カッコいい男になったのです。カッコ悪い失恋だって人生の糧になる。これが富野由悠季監督から視聴者に向けた隠れたメッセージだったのかもしれません。そして、このような脇の登場人物にもいいドラマがあるのが、多くの人から愛される『ガンダム』の奥深いところなのです。

(大山くまお)

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