【インタビュー】春アニメ『アルゴナビナス』の音楽愛。下積みも失敗も「物語の一部」に
超人気コンテンツ『BanG Dream!(バンドリ!)』から派生した『アルゴナビス from BanG Dream!』は、4月からアニメも放映される注目のボーイズバンドプロジェクト。ギリシア神話のアルゴー号から名前を取った彼らの航海は、どんな未来にたどり着くのか。同作の音楽プロデューサー・北岡那之さんのインタビュー後編です。
大切にしたい、キャラクターそれぞれの「ドラマ」

作中のキャラクターたちが繰り広げるバンド活動と、担当声優によるリアルライブがリンクするボーイズバンドプロジェクト『ARGONAVIS from BanG Dream!』(以下、アルゴナビス)のTVアニメが、2020年4月10日(金)より放送開始します。「函館」を舞台に結成される大学生バンド「Argonavis」の物語とその未来について、音楽プロデューサーをつとめる、ブシロードミュージックの北岡那之さんに聞きました。
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──キャラクターのプロフィールを読むと、Argonavisのメンバー全員が、シンプルに見た目を格好良くしただけの「王子さま系」とは違っているように感じます。
北岡 ボーカルの七星 蓮は人と接することが苦手で、ドラムの白石万浬には、実家の酪農場の経営が苦しいという背景があります。ベースの的場航海は幼い頃から面倒をみてくれた兄への複雑な感情があり、キーボードの桔梗凛生には夢に挫折した過去が、ギターの五稜結人には、華やかな実家と優秀な兄に対する強いコンプレックスがあります。
──それぞれのメンバーに複雑な背景があるという設定には、狙いがあるのでしょうか?
北岡 コンテンツ自体が、「女性向けだからこうしなければ」という意識で作られているわけではないのです。バンドのメンバーたちには若さからくる未熟な部分もあって、失敗もたくさんします。時にはお互いの関係性にも危機が訪れるかもしれない。それでも、ひとつになって夢へと向かっていく。それぞれが抱えきれない何かを内面に持っているからこそ、ドラマが生まれ、より多くの方から共感を得ることができる。僕たちはそんなふうに信じています。
物語の中では、Argonavisがこれまで発表してきた楽曲の歌詞に込められた、本当の意味も明らかになります。そして、葛藤も苦悩も乗り越えて成長していくArgonavisの姿を、ご覧になっていただけると思います。
──青春の挫折を乗り越えて成功をつかみ取るという王道の物語であれば、性別どころか年齢も国境も越えて、多くの支持を集められそうです。
北岡 『アルゴナビス』のコンセプトのひとつに「泥臭さ」というのがあります。リアルでも伊藤昌弘さんと日向大輔さんが函館でストリートライブを行ったように、メンバー自身が汗をかきながら、応援してくれるファンの皆さんと一緒になって、今その時にできることを積み上げていく。そうして夢に向かっていく姿を、アニメでも描いていきたいですね。
──内面がきちんと描かれていた方が、キャラクターに対する妄想も膨らみます。「お金のためなら命かけられるよ?」と、うそぶく白石万浬くんも、お金には替えられない絆を、他のメンバーとの間に本当は感じているのかも……?といった具合に。
北岡 そうかもしれませんね(笑)。