声優・福山あさきさんに聞く、映画『カラミティ』の魅力と主役抜擢までの道のり
2021年内に公開予定の映画『カラミティ』は、フランス/デンマーク発の劇場アニメ映画。その日本語吹替版で主演を務める福山あさきさんは、挫折を乗り越え7年をかけて夢をつかんだ、いま注目の女性声優です。折れない心を持つ主人公マーサ・ジェーンと重なるような、福山さんの夢へと向かう力について、作品内容とあわせてお話を聞きました。
マーサは「ズボンをはいて行動する」女の子

「東京アニメアワードフェスティバル2021」のオープングで上映され注目を集めた映画『カラミティ』は、2021年中の国内公開が予定されています。アメリカ開拓時代の伝説的な女性ガンマン、マーサ“カラミティ”ジェーンの少女時代を描いた物語で、故・高畑勲監督も絶賛した『ロング・ウェイ・ノース – Long Way North – 地球のてっぺん』を手がけたレミ・シャイエ監督の、待望の最新作です。
同作の日本語吹替版で主演を務める福山あさきさんは、挫折を乗り越えながら7年をかけて夢をつかんだ、いま注目の女性声優です。福山さんの歩みは、折れない心で自分の道を歩み続けた同作の主人公、マーサ・ジェーンに重なります。『カラミティ』の見どころと、福山さんが吹替版の主役に選ばれた経緯について、福山さん本人と、金子マネージャーにお話を聞きました。
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──マーサ・ジェーンは、日本ではあまりなじみのない人物かもしれません。福山さんから見て、作中の彼女はどのようなキャラクターなのでしょうか?
福山あさきさん(以下、福山) 「女性は女性らしく、スカートをはいて……」という生き方しか選択肢のなかった時代に、そのことに疑問を抱き、家族を守るために「ズボンをはいて行動する」女の子です。自分を貫いて行動する女の子は、周囲との軋轢からトラブルも招きやすいですから、そのために“災厄”(カラミティ)だと煙たがられたりもします。それでも彼女は、信念を曲げずに、目をそむけることなく問題に立ち向かいます。
──初めて台本を読んだ時の印象を教えてください。
福山 マーサが男の子に罵声を浴びせたり泥に突き落としたりするシーンに、まずはびっくりしました(笑)。作中で大人たちが子供を扱うやり方も、現代と違って割と手加減がないですよね。それでも自分を貫くマーサの強さに、まず最初に惹かれました。誰でも大人になればなるほど、周囲に対して言えなくなることが増えます。まだ子供だからというのもあるかもしれませんが、そんなことは気にせず行動する彼女はすごくまぶしいなと思いました。
──マーサには強さ以外の面もあります。
福山 とっても素直ですし、正直、かなりの悪ガキでもありますよね(笑)。でも、悪意を抱く間もなく反射的に言い返したり行動したりしますので、見ていてスカッとするというか、かえって気持ちがいいです。
──映像を初めてご覧になった時の印象はいかがでしたか?
福山 キャラクターの輪郭線を描かなかったり、色彩感覚が独特だったり、日本のアニメでは、あまり見られない映像です。それがすごく綺麗な絵画のようで、見ればみるほど引き込まれていきます。私は自然の景色が好きなんですけど、『カラミティ』で描かれている大自然の風景は、決してリアルではないんですよね。でも、この描き方だからこそ、かえって本物っぽく本物以上に美しく見えるというか……星空のシーンは特に素敵ですので、ぜひ、みなさんにもご覧になっていただきたいです。
──マーサの太い眉毛と仏頂面も印象的です。
福山 吹替前の原語の声も、かなり音域が低いんです。太い眉毛や仏頂面も含めて、それはそれで魅力的ですけど、何もかもが綺麗で完璧な女の子とは違う人間味が感じられて、私はとっても好きです。
美しいだけの話よりも、人間らしい物語の方に惹かれるんです。強く、素直で、悪ガキで、子供らしくて欠点もあって、けれど家族想いなマーサは、人間らしい素敵な女の子だと思います。
──マーサと福山さんご自身に、共通点や似ているところはありますか?
福山 我が強くて負けず嫌いなところは、すごく似ていると思います。私は占い師の方に見てもらうと、必ず「あなたは本当に負けず嫌いね」と言われるんです。YouTubeでの活動もしているんですけど、始めた当初は本当に視聴数が伸びなかったんです。その時も、「絶対に視聴数を伸ばしてやる!」という気持ちでいっぱいでした(笑)。マーサほどではないですけど、負けん気の強さだけは昔からありましたから、そういった部分では演じやすさもあったのかもしれません。
──キャラクターの内面に入り込めたわけですね。
福山 負けん気が強いとはいえ、現実では他人の顔色を見ながら話したりふるまったりするのが普通ですよね。マーサにはそれがありませんから、演じている時もすごく気持ちよかったです(笑)。