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代打で再放送の『つり球』は必見のSF(青春フィッシング)アニメ。奇想天外だが親近感も

新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け、フジテレビ系深夜のアニメ枠「ノイタミナ」の『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』の放送が延期となり、アニメ『つり球』の再放送が2020年4月23日から始まりました。『つり球』は、奇想天外だけど親近感を覚える、必見のSF(青春フィッシング)ファンタジーです。

「楽しい」を分け合えれば、世界だって救える

アニメ『つり球』キービジュアル (C)tsuritama partners
アニメ『つり球』キービジュアル (C)tsuritama partners

 新型コロナウィルス感染拡大の影響で、2020年4月にフジテレビ「ノイタミナ」枠で放送開始したTVアニメ『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』の放送が延期となり、同枠にてアニメ『つり球』の再放送が2020年4月23日(木)から始まりました。同作は約8年前の2012年4月に「ノイタミナ」枠で放送開始したオリジナルアニメ。江ノ島を舞台とした青春フィッシングストーリーです。

 青春とは何かを簡潔に表現するなら? と訊かれたら、「溺れながら泳ぐこと」と答えるでしょう。自分自身でも抑えが効かないまま、花も咲かせられずあちこちに枝葉を伸ばしていく自意識と、少しのことでも傷ついてしまう若葉のような繊細さ。それでも、懸命に自分らしさを見つけようともがきつつ生きていく姿は、溺れながらも水平線の彼方を目指して泳いでいく人に似ています。

 『つり球』の主人公・真田ユキは、青春時代という海を、進む以上に沈みつつある男の子。両親がなく祖母とふたり暮らし、そのうえ小さい頃から引っ越し続きという境遇のせいか、今まで友達がいたことがありません。それどころか、おそらくある種の適応障害でしょう、対人関係のストレスやプレッシャーを感じると、般若のような顔になって硬直してしまいます。そして、押し寄せてくる幻覚の海水にまさしく溺れ、時には記憶すら飛んでしまうのです。

 そんなユキが江ノ島に引っ越してきたある日、ハルという少年が現れます。自称・宇宙人のハルは、無邪気という以上に、他人の気持ちそのものをイマイチ理解しておらず、あまり頓着もしません。どういうわけか海釣りをしたがるハルに誘われるまま、ユキは“釣り王子”こと宇佐美夏樹と出会ってフィッシングを始めます。“謎のインド人”アキラ・アガルカール・山田も加わって釣りの楽しさに目覚めるうちに、世界を救うことになっていく……という物語です。

 魚釣りでどう世界を救うのかは、アニメを見てのお楽しみ。一貫して描かれているのは、それ自体はファンタジーではない、リアルな釣りの面白さです。ロッド(釣り竿)やリールの選び方に、ライン(釣り糸)の結び方やルアーの投げ方やタモの使い方。様々なことを友達に教わり、自分自身でも学んでいくうちに、ユキが般若の顔になる機会は、次第に減っていきます。

 がむしゃらに海を泳ぎ切ろうとして溺れるくらいなら、むしろ立ち止まったまま、その海に釣り糸を垂れてみてもいい。そうして自らの手で獲物を釣り上げれば、あんなにも痛々しかった自意識の枝葉だって、前より強く瑞々しく茂るようになっているはずです。「楽しい」を分け合える友達が隣にいてくれたら、自分自身だけでなく、この世界だって救えてしまうかもしれない。『つり球』は、青春時代には誰もが抱いていた身近な苦しみと喜びを追体験させてくれる、成長物語でもあるのです。

【画像】青春とファンタジーが交錯する!? 『つり球』の世界(5枚)

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