電子書籍大手「BookLive! 」の飛躍支えた、「好きな作品に出会える場所を」の思い
「電子書籍元年」と呼ばれた2010年から、はや10年。今や電子コミックは多くのスマートフォンユーザーにとって身近な存在になりつつあります。数ある電子書籍サイトのなかでも、オリジナル作品やメディアミックスを成功させ、成長を続ける「BookLive!」。その躍進を支えている施策やそこに込められた思いについて聞きました。
成長の原動力となった施策と、ヒット作『凪のお暇』
近年、右肩上がりの成長を続ける電子書籍市場。なかでもその8割を占める電子コミックの成長は顕著です。2011年にサービスをスタートした電子書籍サイト大手「BookLive! 」は、「1冊まるごと無料」コンテンツや、マンガ出版社との提携、個性的なオリジナル作品など、さまざまな施策で独自の魅力を打ち出しています。
無料で読めるコンテンツも多いなか、どのように収益をあげてサービスを成長させているのでしょうか。同サービスを運営する株式会社BookLive ストア本部 本部長の浅井善行さんと、コンテンツ本部 部長の野淵大輔さんに話を聞きました。
――「BookLive!」の成長に大きな効果を発揮した施策などがありますか?
浅井善行さん(以下敬称略) 他社との差別化でいえば、「毎日引けるクーポンガチャ」が大きかったと思います。これは本を選ぶ体験自体をエンタメ化させる施策として、2015年9月からスタートしました。
電子書籍をお得に買えると、利用者からも好評です。クーポンガチャが、ストアに毎日来訪していただく動機になっています。2020年2月には9周年イベントで、値引き率の高いクーポンの出現率を上げるなどのイベントも開催しましたが、実施時には普段の倍近い利用者が集まりました。
これ以外にも、例えば少女マンガなど特定のジャンルに使えるクーポンを発行し、普段は買わないジャンルの購入のきっかけにつなげています。
――サイトの成長に影響したコンテンツはありますか?
紙で人気のコンテンツは電子でも変わらず人気があり、サービス開始当初から売上を支えてくれました。一方で、デジタルならではのコンテンツがWeb広告やSNSをきっかけにファンを獲得し、ストアの成長に大きく成果を発揮する場合もあります。
直近での具体的な例は、TVドラマ化もされた『凪のお暇』です。同作は電子版1巻の配信が始まったタイミングで、弊社スタッフが「女の人生見直し系で面白い作品がある」とプッシュし、広告出稿が決まりました。
出稿と同時にサイトでの売上を伸ばし、その後他社での広告出稿やテレビドラマ化と、話題に火がつきました。電子書籍ストアがきっかけで、売上が伸びるコンテンツを生み出すことは、サイトの成長だけでなく出版市場全体の活性化にも寄与できます。今後も積極的に、『凪のお暇』のようなヒット作品の発掘に注力していきたいです。
――「BookLive!」は、圧倒的な数量の「まるごと1冊無料」が非常に印象的です。この施策では、どんな点を重視していますか?
浅井 ただ無料にして読者を喜ばせるだけではなく、作家さんへ還元することが重要だと思います。紙の書店では単行本が包装され、中を見ることができません。私が子供の頃は、書店で単行本の中身を吟味できました。一冊単位で試し読みできることで、作品を深く知ることができ、購入への大きな後押しとなると考えています。
また「BookLive!」では、定期的に10巻分など通常よりかなり広い範囲で、作品を無料提供する「極上無料」キャンペーンを行っています。この9年で、読者の年齢層はかなり幅広くなりました。私にとっての既刊でも、若い読者にとって新刊になる可能性も秘めています。こうした施策によって、既刊作品の新規読者獲得につなげていきたいです。