マグミクス | manga * anime * game

「意外なキャスト」にもほどがある実写化キャラ 「演技素人」な重要人物がハマり過ぎ? 

マンガの実写版で、そのキャラに実在感や説得力を持たせるのには、プロの俳優の力が不可欠です。しかし、なかには演技は素人ながら、素晴らしいはまり役となったキャスティングもありました。

「本物」の説得力はすごい

映画『ビリーバーズ』ポスタービジュアル (C)山本直樹・小学館/「ビリーバーズ」製作委員会
映画『ビリーバーズ』ポスタービジュアル (C)山本直樹・小学館/「ビリーバーズ」製作委員会

 マンガの実写化では、プロの俳優たちがどこまで2次元のキャラを再現するか、どのように演じるかに注目が集まります。一方で、本業の俳優以外の人物がまさかのキャラに起用され、意外なまでのハマり役となった例もありました。なかでも「その人がそのキャラを演じる意味」も込みで、納得感があった例を振り返ります。

 実写版で原作者のカメオ出演はよくあることで、たとえば映画『カイジ 人生逆転ゲーム』では福本伸行先生が「帝愛グループ」の黒服のひとりとして出演し、「カイジ(演:藤原竜也)」たちが渡る高所の鉄骨に電流が流れていることを示す、短いながら重要な役を演じました。また、ドラマ『宮本から君へ』では、作者の新井英樹先生が主人公「宮本浩(演:池松壮亮)」の父親役を務め、一緒に酒を酌み交わす場面での意外なまでの演技力が話題になっています。作品の「生みの親」としても理想的な出演でした。

 また、ある意味での「生みの親」としての原作者出演では、映画『ビリーバーズ』が衝撃的です。架空の過激宗教団体「ニコニコ人生センター」に所属し無人島で暮らす、主人公の「オペレーター(演:磯村勇斗)」と、男性信者の「議長(演:宇野祥平)」、女性信者の「副議長(演:北村優衣)」の3人の物語がメインで描かれます。ニコニコ人生センターのプログラムに沿った島での生活は、議長による侵入者の殺害事件、オペレーターと副議長が肉体関係になったことなどで、おかしな方向に進んでいきました。

 さらに、各地でニコニコ人生センターの信者たちが凶悪事件を起こしたことによって、オペレーターたちのいる島に信者たちがやってきて、さらなる衝撃展開を迎えます。『ビリーバーズ』の原作者である山本直樹先生は、終盤でニコニコ人生センターを作った張本人「先生」役で登場しました。

 このまさかの出演は、原作の大ファンである監督の城定秀夫さんの案だそうで、山本先生は公式コメントで「個人的にはこっ恥ずかしい限り」とも語っています。ただ、大詰めの場面で大物俳優ではなく、ぱっと見では誰か分からない人物が出てくるというのはそれはそれでインパクトがあり、「本当に謎の人物感あってよかったと思う」「ブラックコメディーとして、あそこで作者本人が教祖で出てくるのは面白すぎた」などと話題を呼びました。

 また、「誰か分からない人が演じるべき」役では、映画に続くドラマ版の『連続ドラマW ゴールデンカムイ-北海道刺青囚人争奪編-』(原作:野田サトル)での「誰なのおじさん」のキャストも衝撃的です。原作94話で、敵キャラ「鶴見中尉(演:玉木宏)」たちのいる病院に現れたこの人物は、特に本筋に関わるわけでもなく、本当に最後まで誰なのか分からないままでした。ただ、独特な髪形と妙にホクロの多いつぶらな瞳の顔、包帯とコルセットを巻いたそのビジュアルは強烈でファンの間で人気を博しています。

 ドラマの放送が発表された後、この誰なのおじさんのキャストについてはさまざまな意見が飛び交い、「北海道のスターとしてTEAM NACSの誰か出てくれ」「本当に誰か分からないそこら辺のおっさん使って驚かせてほしい」「作者の野田先生がやるのでは」と予想合戦が行われていました。そしてドラマ第8話で登場した誰なのおじさんは、本当に一見しても誰なのか不明な人物が演じており、リアルタイムで視聴していたファンの「誰なの?」「怖いよぉ!」といった声が相次ぎます。

 あまりにも再現度が高かった実写誰なのおじさんを演じていたのは、映画1作目とドラマ第1話、9話の監督を務めた久保茂昭さんでした。マグミクス編集部が実写シリーズを手掛けたWOWOWのプロデューサーである植田春菜さんに行ったインタビューによると、8話を8話を監督した片桐健滋さんやスタッフがどうしても誰なのおじさんを出したいと願い、久保監督に話が行ったとのことで、原作ファンである久保監督も「お客さんが喜んでくださるならやります」と受け入れたそうです。

 そのほか、特殊な業界、仕事を描いた作品で、その分野の「大物」が出てくるというのも話題性があって効果的なキャスティングです。たとえば、メタルが題材の映画『デトロイト・メタル・シティ』(原作:若杉公徳)では、スタッフがダメもとで頼んだところKISSのフロントマン、ジーン・シモンズさんがラスボスであるメタル界の帝王「ジャック・イルダーク」役で出演してくれる、というまさかの出来事がありました。

 さらに驚きの例では、映画『宇宙兄弟』(原作:小山宙哉)での、宇宙飛行士の野口聡一さん、バズ・オルドリンさんの出演が有名です。

 日本人で初めてISS(国際宇宙ステーション)での船外活動を行った野口さんは主人公「ムッタ(演:小栗旬)」と弟「ヒビト(演:岡田将生)」が子供の頃に出会ったあこがれの宇宙飛行士として登場し、あのアポロ11号の乗組員のひとりとして、ニール・アームストロング船長に続いて月面歩行を行った史上2番目の人類であるオルドリンさんは、ヒビトが乗ったロケットの打ち上げを見守るムッタの前に現れる老人(本人役)を演じました。

 本物の宇宙飛行士たちの出演は、公開前の話題性だけでなく、「やっぱ本物が出てくると説得力が違う」「オルドリンさんの口から『ロケットを打ち上げる動力は人間の魂だ』って言われたらそりゃ感動するよ」と評判を呼びました。

(マグミクス編集部)

【画像】え…っ? 「生々しすぎるよ」「よくぞここまで」 こちらが『ビリーバーズ』ヒロインとして衝撃の役を演じた北村優衣さんです

画像ギャラリー

1 2