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えっ知ってた? 「原作と主人公違う」実写版 元の主役は地上波だと無理か

マンガの実写化作品は出演者や放送枠、上映時間の都合から、改変も避けられません。なかでも「主人公が違う」という大きな改変は、特に原作ファンから受け入れられない懸念もありますが、意外にも功を奏してヒットにつながるケースも見られます。

これはこれで良い改変!

「SHISEIDO」のCMに出演した際の長澤まさみさん
「SHISEIDO」のCMに出演した際の長澤まさみさん

 実写化作品の気になるポイントとして、「原作をどこまで再現できるか」を重要視する人は少なくありません。しかし、尺の問題や演じられるキャストによって原作を完全に再現することは困難であり、なかには肝心な主人公が原作とは異なる作品さえも見られます。

 違和感を持つ原作ファンもいるなか、「これはこれで良い改変」「違う視点で描かれるのも面白い」と、主人公変更をポジティブに受け取る声も多かった作品を振り返ります。

●『アンメット ある脳外科医の日記』

 2024年春に放送されたドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』は、同名のマンガ(原作:子鹿ゆずる/作画:大槻閑人)から主人公が変わるという大きな改変が放送前より注目されていました。

 原作ではアメリカの大学病院から赴任してきた脳外科医「三瓶友治(演:若葉竜也)」が主人公でしたが、ドラマでは三瓶が救おうとする記憶障害を持つ女性医師「川内ミヤビ(演:杉咲花)」が主人公となり、患者との出会いから自身も再生していくストーリーが描かれていました。

 原作者の子鹿先生は関西テレビの米田孝プロデューサーとの対談で、数あるドラマ化のオファーのなかでも関西テレビの「ミヤビを主人公にする提案」に興味を持ち、「描きたかったミヤビをしっかり描いてもらえるのではないか」との思いから快諾したことを明かしています。

 当初は原作からの「改変」に懐疑的な声もありましたが、第1話放送後には「ミヤビの葛藤も描くことでよりドラマ性が増して面白い」といった改変をポジティブに受け入れる原作ファンの声に加え、「1話から名作の予感」「リアタイで観てびっくりするほど泣いた」などドラマから入った人びとの反響も多くあり、「#アンメット」がX(旧:Twitter)世界トレンド1位を獲得していました。

●『ショムニ』

 都内の中堅商社で「女子社員の墓場」「会社の掃き溜め」と呼ばれる「総務部庶務二課」(通称:ショムニ)に所属するOL6人の活躍を描いたドラマ『ショムニ』は、1998年から2013年まで4シリーズが放送されるヒット作となりました。

 ドラマではショムニを率いる「坪井千夏(演:江角マキコ)」が主人公となっていましたが、原作マンガ(作:安田弘之)ではショムニの面々に振り回される気弱な「塚原佐和子(演:京野ことみ)」が主人公です。千夏を筆頭とする個性的な先輩たちとの出会いを経て、塚原が成長していく様子がギャグを交えながら描かれています。

 ドラマはより破天荒になった千夏たちが自由に振る舞うも、なぜか会社をに良い結果をもたらす痛快なコメディーとなっており、「塚原の成長物語になってる原作も良いけど、毎回スカッと観られるドラマも好き」「オリジナルキャラがいたり下ネタがほぼなかったり、オリジナル要素も多いけど、ドラマはドラマでちゃんと面白い」とドラマ版の改変が功を奏し、放送から20年以上経った現在でも好きなドラマに挙げる人も少なくないようです。

●『タッチ』

 あだち充先生の代表作のひとつ『タッチ』は、2005年に実写版映画が公開されました。

 高校野球を題材に、双子の兄弟「上杉達也」と「和也」、幼馴染の「浅倉南」の三角関係を描いた本作は、過去にもドラマ化、ゲーム化、舞台化などさまざまなメディアミックスを果たしていました。2005年に公開された映画は他の作品とは異なり、主人公が達也ではなく南に変更されています。

 長澤まさみさん演じる南の視点から、甲子園を目指すも志半ばで命を落とす和也(演:斉藤慶太)と思いを引き継いだ達也(演:斉藤祥太)の姿が描かれた映画は、『ジョゼと虎と魚たち』や『メゾン・ド・ヒミコ』でも知られる犬童一心監督が手がけたことも大きな話題となりました。

 映画では主人公の変更に加え、「南が新体操部員ではない」「柏葉監督をはじめ、登場しないキャラクターがいる」といった改変もありましたが、「長編マンガの実写化としてはしっかりまとまってる」「南含めキャストも良かったし、駆け足だけど原作の要素は入ってたから良かった」と好評の声も集まっています。

●『浦安鉄筋家族』

 1993年より「週刊少年チャンピオン」で長期連載を続けている「浦安鉄筋家族」シリーズ(作:浜岡賢次)は、千葉県浦安市に住む超元気な小学生「大沢木小鉄」とその家族の日常を描いたギャグマンガです。

 2020年に放送されたドラマでは主人公が小鉄(演:斎藤汰鷹)ではなく、個性派俳優の佐藤二朗さん演じる小鉄の父「大鉄(だいてつ)」へと変更されています。

 第1話では原作者の浜岡先生が「カートンごと煙草吸ってもらえるのかな~?」とコメントで期待していたシーンが再現され、SNSも大いに沸いて、トレンド入りを果たしています。

 さらにコロナ禍の影響で撮影が中断された際、ロケ地の一軒家が取り壊されるといった原作さながらのハプニングや、キャラのモデルとなった稲川淳二さんや大仁田厚さんなどの出演も大きな話題を集めました。

 当初は主人公の変更に懐疑的な意見もありましたが、「子供目線は難しいか」「大鉄含め大人キャラがメインのエピソードも多いから、むしろこの改変はアリ」「小鉄が主人公のままだと地上波のコンプラ的に厳しそうだと思ってたら、1話でコンプラに喧嘩売ってて笑った」と、改変が支持につながる要因にもなったようです。

(田中泉)

【画像】え…っ? この可愛さなら「主人公目線」でも納得? こちらが浅倉南を演じた20年前の長澤まさみさんです

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