『あんぱん』のぶの同期記者の「サザエさんヘア」が話題に? 戦後、あの髪型はなぜ流行った?
朝ドラ『あんぱん』は戦後に突入しており、のぶがポスターの「サザエさんヘア」になるのも、もうすぐでしょう。なぜあの髪型が、当時流行したのでしょうか?
のぶが新聞社に入るのと『サザエさん』スタートは同じ年

NHK連続テレビ小説『あんぱん』は第14週に入り、教師を辞した「のぶ(演:今田美桜)」が、「東海林(演:津田健次郎)」との出会いをきっかけに、戦後初の女性記者として高知新報に入社します。
ここで気になるのが、のぶと同期の記者「小田琴子(演:鳴海唯)」のヘアスタイルです。前髪をカールさせた髪型は、どう見ても『サザエさん』の「サザエ」そっくりで、のぶも『あんぱん』のポスターでは同じような髪型になっています。いずれドラマのなかでも、このスタイルを披露することでしょう。
この髪型は、終戦直後に女性の間で流行したものです。『サザエさん』の連載が始まったのは1946年(昭和21年)で、『あんぱん』でのぶが高知新報に入るのも同じ年なので、「サザエ」ものぶも当時の流行に乗っていたということでしょう。
それまで戦中はパーマなどの華美な髪型が禁止されていたため、戦後は華やかな髪型が女性に好まれました。当時は「電髪(電気パーマ)」であり、髪に負担がかかりましたが、多くの女性がパーマを楽しんでいたのです。当然、アメリカの女性の髪型が参考にされています。
1940年代にアメリカの女性の間で流行していたのが、「ヴィクトリーロール」というヘアスタイルです。フロントからサイドにカールやロールをあしらったボリュームがあるもので、大戦の勝利を祈願してこの名がつきました。
2026年後期の朝ドラ『ブラッサム』のモデルでもある作家、宇野千代さんが編集した女性誌「スタイル」の1946年(昭和21年)の号を見ると、ヴィクトリーロールをアレンジした女性のヘアスタイルが紹介されています。進駐軍としてやってきたアメリカ軍人の妻も当時の女性誌で紹介されており、やはりヴィクトリーロールに近い髪型をしていました。
また、1947年(昭和21年)に撮影された女優・高峰秀子さんの写真を見ると、見事にトップとサイドがロールしているサザエさんそっくりのヘアスタイルをしています。同年の雑誌「婦人文庫」の対談に登場した高峰さんも同じ髪型でした。
高峰さんは記者の質問に対して、映画の撮影のときに不便なのでパーマはかけていないと答え、「すいて油をつけてピンカールします」「朝はピンを取るとグルグルになつておりますから、ブラシで一度とかせばすぐこういうふうになります」と話していました。髪に負担のかかる電髪よりも、手軽に作れるヘアスタイルだったのでしょう。なお、サザエはカーラーを使っている様子が描かれています。
サザエの髪型を「モガヘアー」と紹介している記事もありますが、「モガ(モダンガールの略)」と呼ばれる最先端の女性が登場したのは大正時代であり、当時流行したのはボブヘアー、いわば「ワカメ」の髪型でした。明治時代まで主流だった日本髪をばっさり切ったもので、社会に進出して活発に活動する女性を象徴しています。
ただし、このような女性はごく少数だったようです。また、西洋からパーマが輸入されて、サイドに細かなウェーブを付けていく、「マルセルウェーブ」も流行しました。
ただ、いずれもサザエの髪型とは大きく隔たっており、「モガヘアー」という表現はそぐわないと考えられます。また、戦後すぐに流行の髪型を紹介している女性誌を調べても、「モガヘアー」という表現は見付かりません。近年、インターネットで流通しはじめた言葉のようです。
いずれにせよ、のぶやサザエの髪型は、戦後にそれまでの制限から解放された活発な女性の象徴だと言えるでしょう。今後、のぶがどのタイミングでサザエさんヘアに変えるのかにも、要注目です。
(大山くまお)

