「壊れた人間」が主人公…『ガンダム 閃光のハサウェイ』が描く「戦争は人を壊す」という残酷な真実
2021年に公開され話題となった『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』。この冬公開予定の続編『キルケーの魔女』を前に、改めて注目したいのが主人公ハサウェイ・ノアの壊れた人物像です。監督自らが「自分ではまともだと思っているが実際は壊れている」と語る彼の異常性は、一体何に起因するのでしょうか。
千年先を考える青年の「真面目すぎる狂気」

この春『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス) 』で盛り上がったガンダム界隈ですが、最終回の興奮冷めやらぬなか、新作『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』(以下キルケーの魔女)の今冬公開が発表されたことは、ガンダムロスに苦しむ人に希望をもたらしたことでしょう。
『キルケーの魔女』は、2021年に公開された『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の続編で、全三部作の2本目にあたる作品です。本シリーズは「ガンダム」シリーズの生みの親・富野由悠季氏による同名小説を原作としており、原点である『機動戦士ガンダム』から続く宇宙世紀(U.C.)を舞台とする作品です。
主人公は、『機動戦士ガンダム』の名艦長としてファンにお馴染みの「ブライト・ノア」と「ミライ・ヤシマ」の長男「ハサウェイ・ノア」。『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の後に続く物語として、「アムロ・レイ」と「シャア・アズナブル」、ふたりと密接に関わりその意思を継ぐ者としてのハサウェイの戦いが描かれています。
本作の特徴は、主人公のハサウェイが「壊れている」と称されることにあります。作り手も明確にそのことを意識しているのですが、なぜ壊れた青年を主人公としているのか、そのことで本作は何を伝えようとしているのか、考えてみたいと思います。
●腐敗した連邦政府の粛清を目論む主人公
物語の舞台はU.C.0105年、『逆襲のシャア』で描かれた「第二次ネオ・ジオン抗争」よりも後の時代。地球連邦政府の高官が地球を汚染させ、人狩りによって民衆を生まれ故郷から追い出し宇宙に送る政策が横行しています。そんな状況に反旗を翻した組織「マフティー・ナビーユ・エリン」が、そんな腐敗した高官たちを粛清するべく戦いを挑んでいる、というのが『閃光のハサウェイ』の対立構図です。
そして、そのマフティーを束ねるのがハサウェイです。彼は、これまで戦争で死んでいった人々の意思を無駄にしないために反政府活動に身を投じました。高官たちが多数乗るスペースシャトルに乗り込むハサウェイは、そこで連邦政府の「ケネス・スレッグ」大佐と「ギギ・アンダルシア」という少女と出会い、彼らとともにマフティーの名を勝手に騙るハイジャック犯との戦いに巻き込まれるところから物語が始まります。
これをきっかけにギギに惹かれ、ケネスと奇妙な友情を結ぶハサウェイですが、自らの信念に基づき反政府組織としての活動を活発化させていき、地球連邦軍との戦いに身を投じていくのです。
マフティーであることを隠しているハサウェイは、時に偽装工作として自らが泊まっているホテルをわざと襲撃させたりするなど、手荒かつ、自分も危険にさらすような行動を取ります。勘の鋭いギギはハサウェイがマフティーだと疑いながらもケネスにそれを告げずにふたりの間で揺れ動き、ケネスは腐敗した地球連邦政府に嫌気が差しながらも軍人としての責務を果たそうとしています。
総じて、『閃光のハサウェイ』の世界はシャアが唱えた人の革新にはほど遠く、争いの絶えない世界です。『ジークアクス』は地球連邦軍ではなくジオン軍が勝利した世界線を描き、そのジオン軍の権力争いで対立が生まれていることが描かれていましたが、地球連邦軍が勝利したこちらの世界線も腐敗だらけで、どちらが勝利しても人の世の中はあまり良くならないということがよくわかる内容です。