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『昴と彗星』は真の集大成? 『頭文字D』30周年で見えた、しげの秀一先生の進化と「クルマ愛」

『頭文字D』編集担当として興奮した「プロジェクトD」編

プロジェクトDの茨城遠征で描かれた、啓介と「ゴッドフット」星野の激しいバトルの場面(『頭文字D』31巻より)  (C)しげの秀一/講談社
プロジェクトDの茨城遠征で描かれた、啓介と「ゴッドフット」星野の激しいバトルの場面(『頭文字D』31巻より)  (C)しげの秀一/講談社

──千葉さんは『頭文字D』の途中から編集担当をされていたそうですね。ストーリーでいうと、どのあたりからでしたか?

千葉:「プロジェクトD編」の開始前くらいからですね。 ちょうど、栃木遠征に舞台が移っていくあたりです。

──「プロジェクトD」に加わった藤原拓海が、高橋兄弟らとともに関東制覇を目指すストーリーでしたね。

千葉:そうです。前振り通りに世界観が壮大かつリアルになって、遠征先にどんなキャラクターと車が出てくるのか、わくわくしたのを覚えています。

──『頭文字D』にはさまざまな魅力がありますが、それぞれの登場人物がお金や地位を欲するのではなく、ただ自分のクルマを愛し、自らの「プライド」だけをかけて戦うところが、読者を熱くさせるポイントではないかと思います。

千葉:「プロジェクトD」編では、プロのドライバーも出てきますが、彼も掛け値なしにプライドをかけて戦います。担当時は先生の 絵の質感も話が進むごとにリアリティが増しているなと感じていて、「ものすごいステージに来たんだな」と毎週興奮していました。今さらながら、本当に面白いところを担当させてもらってたんだなと思います。

──作品制作にあたっては、実際に峠にロケハンに行ったりもされたのでしょうか?

千葉:はい、現場取材には何度か先生に同行したことがあります。舞台となる峠まで行き、マネージャーさんがビデオカメラを回しながらクルマを走らせたり写真を撮ったりしていました。神奈川や静岡が舞台の『MFゴースト』でも、先生は現地取材をされていました。一般のクルマが走っているとゆっくり撮れないから、早朝の暗い間に行って、明るくなった時に撮影すると聞きました。

 最近も、しげの先生は新作『昴と彗星』のために群馬に撮影に行かれたそうです。同じ群馬でも、当時と今では景色が当時と違うから、「改めて撮影して良かった」と言っていました。

「渋滞の時こそいいんだよ」しげの先生のクルマ愛

お話をうかがった、講談社・宣伝企画グループ担当部長の千葉素久さん
お話をうかがった、講談社・宣伝企画グループ担当部長の千葉素久さん

──『頭文字D』の編集担当になった頃で、印象に残っている出来事はありますか?

千葉:実は私は東京生まれ東京育ちで、もともとクルマを買う必要もなく、クルマに強い興味があったわけではなかったんです。そんな状況でしげの先生の 担当になった時に、そのことを 正直に話したら、「君みたいな人がどう思うかかも、とても大事なんだ」と言っていただき、ほっとしたのを覚えています。

──今回の取材に先立って、「クルマを描き続ける理由」について、しげの先生に質問させていただいたところ、「描く理由を特に意識していることはなく、あくまで自然に描き続けています」とお答えくださいました。先生とご一緒するなかで、実際に「クルマ好き」を感じたエピソードなどはありますか?

千葉:「クルマが好き」というのは前提だからなのか、描く理由については「そこまで考えていない」という感じでした。先生のなかでは言語化は難しいというか、自然な感覚で描かれているように思います。

 ただ、印象に残っている出来事はありました。高速道路の渋滞の話をした時です。「渋滞って辛いですよね」と私が言った時、「高速の渋滞は、オートマよりマニュアルの方が疲れないんだよ」とおっしゃったんです。

──それはどうしてですか?

千葉:先生にとっては、高速で渋滞した時は、操作が簡単でも単調なAT車より自分で車を操作する楽しさがあるマニュアルの方が楽なのだろうと思います。

新作『昴と彗星』は本当の意味で「集大成」?

2025年7月22日から連載開始した新作『昴と彗星』  (C)しげの秀一/講談社
2025年7月22日から連載開始した新作『昴と彗星』  (C)しげの秀一/講談社

──7月22日から連載開始した『昴と彗星』では、『頭文字D』と同じ秋名山を舞台に、懐かしい顔ぶれも登場して、物語がスタートしました。この作品についても少し教えていただけますか?

千葉:『昴と彗星』は『頭文字D』と『MFゴースト』の世界観を引き継いでいます。しげの先生のすごいところは、作品ごとに進化していくところです。『MFゴースト』は、しげの先生がそれまで培った技術と、描きたいことを凝縮させた「集大成」だなと思っていたのですが、今回の新作は『頭文字D』『MFゴースト』からさらに進化した唯一無二の走行シーンと、エンタテインメント性が融合した、それこそ本当の「集大成」になるような感じがします。

──最後に、30周年を迎えた『頭文字D』への思いをお聞かせください。

千葉:「30周年」という節目に、特に長く読んでくださっているファンの皆さんに何か特別なものを届けたいという思いがありました。『頭文字D』は時代を超えて愛される作品です。これからも「クルマが好きでよかった」と思える瞬間を、読者の皆さんと共有していけたらと思います。

* * *

 しげの秀一先生の新連載『昴と彗星』は、講談社「週間ヤングマガジン」で7月22日から連載中、「ヤンマガweb」でも第1話が無料公開されています。『MFゴースト』の主人公、カナタ・リヴィントンが公道レース「MFG」を席巻した翌年、群馬と神奈川に現れた「昴」と「彗星」がどのような走りを見せてくれるのか、大きな期待をもって見届けたいと思います。

(マグミクス編集部)

【画像】「若い頃に乗ってた」「夢がありすぎる」これが自動車7社と『頭文字D』の巨大広告です(9枚)

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