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『頭文字D』の影響力をしみじみ感じた今春の出来事。「ハチロク」はこれからどうなる?

90年代後半から車好きの若者たちに絶大な人気を博した『頭文字D』。 このマンガが存在しなければ、「ハチロク」という言葉が全国の若者に広がることもなかったし、「トヨタ86」は発売されなかったでしょう。2021年、あの「藤原豆腐店」はどうなったのか?EV化が加速するなか、改めて実感させられた『頭文字D』の影響力に迫ります。

新型「トヨタ86」で思い出される、限界バトルの軌跡

マンガ『頭文字D』第1巻(講談社)。主人公の藤原拓海の後ろに、「AE86」トレノが描かれる
マンガ『頭文字D』第1巻(講談社)。主人公の藤原拓海の後ろに、「AE86」トレノが描かれる

 2021年4月5日、トヨタがスバルと共同開発した新型スポーツカー「GR86」が世界初公開となり、喜んだのがクルマ好きのオジサンたち。ナゼなら……このご時世にマニュアル、スリーペダルの2ドアスポーツカーが発売されること自体が貴重なうえに、「86(ハチロク。決してハチジュウロクと読んではいけません)」という響きが特別感を与えているからです。

 その特別感の源泉となっているのが、伝説の人気マンガ『頭文字D』です。このマンガを知らない方は「86(ハチロク)」という呼称と同様、タイトルの読み方に注意が必要です。“頭文字”と書いて“イニシャル”と読むのが正解なので……。作者は『バリバリ伝説』で一世を風靡した、しげの秀一先生です。

「週刊ヤングマガジン」で1995年から2013年まで連載され、累計発行部数約4800万部を誇る『頭文字D』で、主人公の藤原拓海が操るクルマが「AE86(エーイーハチロク)」と呼ばれたトヨタのスプリンタートレノでした。発売当初は同じ「AE86」の兄弟車であるカローラレビンの方が主流でしたが、同作の影響でトレノが爆発的人気を博したのです。

“公道最速”を目指す主人公がこのハチロクを巧みに操り、さまざまな強敵と公道バトルを重ねていくストーリー。峠で限界に挑むバトルの描写に読者は釘付けとなりました。“ヒール&トゥ”、“ダブルクラッチ”、“左足ブレーキ”なんて用語を聞くと、胸がキュンとなる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 このマンガで欠かせないキーワードが「ドリフト」です。タイヤを横滑りさせながら走るドライビングテクニックで、多くの青年の憧れとなり、習得するためのマニュアル本が数多く出版されました。そして、レーサーの土屋圭市氏は、“ドリキン(ドリフトキング)土屋”と呼ばれ、カリスマ的存在となったのです。

 当時のドリフトブームは凄まじく、筆者の友人も毎晩のようにVHSビデオでドリキン土屋のテクニックを研究し、週末は峠を攻めに行っていました。今でいう「ゲーム実況」でテクニックを磨く若者と同じ感覚だったのかもしれません。こうした影響力があったからこそ、生産終了となった「ハチロク」が2012年に「トヨタ86」として再び販売されることになったのでしょう。

【画像】マンガからそのまま出てきたような「拓海のハチロク」と、発表された新型「86」

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