『こち亀』で描かれた「車中泊」がスゴい! フェラーリに住む一家の驚愕生活とは
数年前から人気沸騰中の「車中泊」。コロナの影響でそのブームに拍車がかかった状態ですが、『こちら亀有公園前派出所』の秋本治先生は、すでに数十年前に車中泊を描いていたのです。「フェラーリに住む家族には、いったいどんな事情があったのか?」描かれた時代背景など、現代に通じるエピソードを探ります。
我が家は2500万円、スペックは「V12で380ps」?
「車中泊」という言葉が浸透してから長く経ちますが、レジャーや趣味での車中泊はせいぜい数日間でしょう。しかし、家で暮らすように毎日寝泊まりするとなると、思い浮かぶのは各地での試合があるアスリートたちではないでしょうか。なかでも、フィギュアスケートの浅田姉妹やゴルフの横峯さくら親子は有名です。ちなみに芸能界では、売れるまで普通乗用車の車内で5年間暮らしたLiLiCoさんというツワモノがいます。
しかし、今から30年以上前の1988年に、『こちら亀有公園前派出所』で車中泊の様子がすでに描かれていたのです。両津勘吉を驚かせたのは、2ドアのスーパーカーで暮らす家族でした。
コミックス52巻第10話「我が夢フェラーリの巻」に登場するのは、フェラーリが好きで好きでたまらない中年のサラリーマン。彼は退職金を前借りし、当時およそ2500万円したフェラーリのテスタロッサを購入して、家族で暮らしはじめたのです。
ある日、一家の息子の出井野(デイノ)が自宅となったテスタロッサに帰宅すると、お母さんが、洗濯物を車体の両端に張ったロープに干しながら「おかえり」と出迎えます。「おなかがすいたよ。何かない?」という出井野に「ダッシュボードにケーキがあるよ」と答えるお母さん。車内には、テレビ、卓上コンロ、魔法瓶、テーブルなどが置かれ、まるで居間のようになっています。ちなみに出井野くんは、フロントのトランクを寝室にしており、朝目覚めると、お母さんに「はやくラジエターのお湯で顔を洗っておいで」と言われていました。
こんな家族が『こち亀』に登場する背景には、1988年当時のバブルの影響で住宅価格が高騰し、家を買えないサラリーマンが増えたという社会背景がありました。実際、家が無理ならせめて車だけでも……と、アパート住まいでポルシェやフェラーリを乗り回す人も出現していたのです。そういえばここ数年、首都圏のマンション価格は右肩上がりになっているそうですが、どこか通じるものがあるのかもしれません。