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『昴と彗星』は真の集大成? 『頭文字D』30周年で見えた、しげの秀一先生の進化と「クルマ愛」

2025年の夏、伝説のマンガ『頭文字D』にひときわ大きな注目が集まっています。『頭文字D』30周年を祝う広告キャンペーンに国内自動車メーカー7社がコラボし、同作の世界観を引き継ぐ新連載『昴と彗星』が、大きな盛り上がりのなかでスタートしました。かつて、『頭文字D』担当として作品づくりに関わり、現在「30周年企画」を進める「仕掛け人」が語るのは……?

自動車メーカー7社とコラボした大型広告が話題に

新しいエンジンを搭載した愛車「ハチロク」に全幅の信頼を寄せ、「ハチロク」同士の限界バトルに挑む藤原拓海(『頭文字D』13巻より)  (C)しげの秀一/講談社
新しいエンジンを搭載した愛車「ハチロク」に全幅の信頼を寄せ、「ハチロク」同士の限界バトルに挑む藤原拓海(『頭文字D』13巻より)  (C)しげの秀一/講談社

 公道を舞台とした「走り屋」たちのドラマを描いたマンガ『頭文字D(イニシャルD)』の30周年を記念し、2025年6月9日から15日まで、東京・渋谷駅の地下に大型広告が掲出されました。作者・しげの秀一先生による描き下ろしイラストとともに「#クルマが好きでよかった」「私たちもです」というメッセージが掲げられ、SNSユーザーがクルマ愛を語る投稿キャンペーンは5万投稿を超えるなど、大きな話題となりました。

 しかも、この広告では作中に登場する自動車のメーカー7社が勢揃いするという前代未聞のコラボレーションが実現し、7月22日から始まった、しげの先生による新連載『昴と彗星(すばるとすばる)』を大きく盛り上げています。

 かつて『頭文字D』の編集担当をつとめ、『頭文字D』30周年の企画を担当する講談社・宣伝企画グループ担当部長の千葉素久さんに、編集担当から見たしげの先生の作品づくりと「クルマ愛」について聞きました。

新聞広告から始まった、特別な「30周年」

藤原拓海、高橋兄弟とその愛車が描かれた『頭文字D』30周年の新聞広告。新聞2紙の広告をつなぎ合わせると一枚絵が完成する  (C)しげの秀一/講談社
藤原拓海、高橋兄弟とその愛車が描かれた『頭文字D』30周年の新聞広告。新聞2紙の広告をつなぎ合わせると一枚絵が完成する  (C)しげの秀一/講談社

──『頭文字D』30周年を記念した渋谷駅での大型広告が話題になりましたが、それに先立つ6月6日には、全国紙で30周年記念の新聞広告が展開されています。これは、『頭文字D』の世界観を引き継ぐ『MFゴースト』最終巻の発売日でもありました。このプロジェクトはどのように始まったのでしょうか?

千葉素久さん(以下、千葉):もともと「『頭文字D』30周年」という節目に改めて長く読んでくださっている読者にむけて、感謝を込めた何かしらの企画を何かしたいという思いがありました。私が以前ライセンス部署にいた頃、しげの先生に「商品化の新規版権となる『頭文字D』のイラストを描いていただけないか」とお願いしたら「『MFゴースト』の連載から手が離れたら描ける」との返事をいただくことができました。その後、私が宣伝部に異動になり、新聞の担当になったことから、そのイラストは先に新聞広告で出した方が、商品化にとっても効果的だと思い、今回の企画を進めるに至りました。

──なぜ新聞広告だったのでしょう?

千葉:『頭文字D』のファンは、作品の主な舞台でもある北関東を中心とした地方に多い傾向があります。コアは聖地の群馬をはじめ、埼玉、栃木、茨城、神奈川などです。新聞はそういったコアファンがいる全国津々浦々に、マンガと同じ紙で届けられるメディアなので、良い手段だと考えました。30周年という記念の年に、全国のファン、特に作品の舞台となった地域のファンに特別感のある宣伝ができたらと思いました。

──それが渋谷での駅広告、そしてメーカー7社とのコラボへと発展したんですね。

千葉:はい。新聞広告の企画が進むなかで、代理店から「駅広告も一緒にやりませんか」という提案をいただいたんです。新聞読者は年齢層が高めの想定ですが、駅広告、特に渋谷という場所なら外国人観光客も含めて若年層のファンにも届くので、海外でも人気が高まり「グローバルIP」になった『頭文字D』にとって良い場所だと思いました。

 また、新聞広告は朝日新聞と読売新聞でそれぞれ違うイラストで展開していますが、つなげると一枚絵になる仕様だったので、どこかに一枚絵として見られる場所も欲しかったんです。

 驚いたのは、そこで「車メーカー7社とのコラボレーション」という提案が出てきたことです。正直、私たちはいくら何でも難しいと思っていました。

──なぜですか?

千葉:我々はしげの先生が作った「マンガ」を世に出す立場で、本物の「車」を世に出す立場の自動車メーカーさんとは別の世界にいるという感覚がありました。もちろん車や車メーカーさんに対するリスペクトはあるものの、車メーカーさんと「一緒に頑張りましょう」という発想は、確かに素晴らしいですが、我々からは出ませんでした。

 しかも、企画から実現までの期間が短かったんです。メーカーさんにはそれぞれお考えがあるでしょうし、作中はあくまでマンガの世界観のなかでそれらが勝ったり負けたりするわけで、「うちの車は負けていますから……」といった声があがることもあるかもしれない。

──そうした懸念に対してはどう対応されたんですか?

千葉:「もし7社すべてが問題なく協力してくださることがあるなら、もちろんありがいですが、1社様でも不安があるというのであればやめましょう」と、代理店に伝えました。そうしたら、驚くことにあっという間に「全7社いけます」と代理店さんから報告があり、本当に大丈夫なのかと確認したほどでした。

 結果的に、広告企画はメーカーさんに大変喜んでいただけたとうかがいました。その報告には我々もとても感動しました。

【画像】「若い頃に乗ってた」「夢がありすぎる」これが自動車7社と『頭文字D』の巨大広告です(9枚)

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