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『宇宙刑事ギャバン』設定が絶妙だった「魔空空間」 新作『インフィニティ』にも期待集まる?

2026年に放送される『超宇宙刑事ギャバン インフィニティ』の原点『宇宙刑事ギャバン』に登場した「魔空空間」は、特撮ドラマの矛盾を解消した画期的な設定でした。その誕生には『ギャバン』ならではの理由があったのです。

違和感をなくし、カッコ良さも引き立った「絶妙な設定」

『超宇宙刑事ギャバン インフィニティ』ティザービジュアルには、「超次元英雄譚」の文字がそっと置かれている (C)テレビ朝日・東映AG・東映
『超宇宙刑事ギャバン インフィニティ』ティザービジュアルには、「超次元英雄譚」の文字がそっと置かれている (C)テレビ朝日・東映AG・東映

 2026年に放送される『超宇宙刑事ギャバン インフィニティ』の元祖といえば『宇宙刑事ギャバン』です。当時、特に斬新な設定だったのが宇宙犯罪組織「マクー」の首領「ドン・ホラー」が生み出す「魔空空間」でした。新作の『ギャバン』でも、魔空空間の設定がどのように引き継がれるのか、注目しているオールドファンも多いでしょう。

 魔空空間は、特撮にありがちなツッコミどころを回避したうえに「ギャバン」や武器、メカの強さなどが際立つ設定で、視聴者を釘付けにしました。このように画期的な設定が生まれた理由は、当時の撮影事情にありました。

「コンバットスーツ」に「蒸着」したギャバンは、宇宙犯罪組織マクーの「ダブルマン」やモンスターを圧倒します。 しかし、魔空空間によって戦況は一変しました。辺りが赤い渦に包まれると、ギャバンは「超次元高速機ドルギラン」から飛び出したマシーン「サイバリアン」に乗って、魔空空間に突入します。

 地上では、キックやパンチのほかに「レーザーZビーム」などの光線技を持つギャバンはほぼ無敵ですが、魔空空間では少々事情が変わっていました。

 ダブルマンやモンスターの力は魔空エネルギーによって3倍になり、戦闘円盤の光線がギャバンに襲いかかります。ギャバンは強くなった敵に対抗するために、「電子星獣ドル」や「高次元戦闘車ギャビオン」などの超兵器を活用するのです。

 一方、巨大ロボが登場した『バトルフィーバーJ』以降の「スーパー戦隊」シリーズでは、一度メンバーの合体技で怪人を倒した後に、怪人が巨大化します。強引に巨大ロボと巨大化怪人との対決が始まるワケですが、巨大ロボがないと怪人を倒せないため、武器だけで怪人を倒した『秘密戦隊ゴレンジャー』の頃より、スーパー戦隊が弱く見えてしまいます。

 その点、マクー側が圧倒的に有利な魔空空間は、ギャバン自身の強さを損なうことなく、メカや武器がギャバンを救う起死回生のアイテムとして登場し、既存の特撮との差別化に成功しました。

 もうひとつ魔空空間が便利なのは、戦う場所があちこち移動しても不自然ではないことです。

 異次元空間なので、例えば町から野山、地上から宇宙に瞬間移動しても違和感がありません。ギャバン以前の特撮番組では、今まで町にいたのに、バトル場面になると突然、なんの説明もなく採石場のような広い空き地や人気のない廃屋などに場所が移ります。特撮ファンの間では、誰もが知っている「お約束」として受け入れられていました。

 魔空空間は、特撮ならではの撮影事情から起こる矛盾を、「異次元空間」というSF設定で解消したのです。また、「レーザーブレード」による「ギャバンダイナミック」で敵を一刀両断すると、魔空空間が生み出した暗黒は消滅し、背後にはギャバンの勝利を象徴するように晴れやかな空が広がっていました。ちなみに、敵組織の異空間は『宇宙刑事シャリバン』(1983)の「宇宙犯罪組織マドー」だと「幻夢界」、『宇宙刑事シャイダー』(1984)の「不思議界フーマ」では「不思議時空」として引き継がれています。

撮影現場の事情から「仕方なく」生み出された設定

 目の肥えた特撮ファンもうならせる画期的なアイデアと思いきや、「宇宙刑事大全」(双葉社)の番組プロデューサー吉川進氏のインタビューによると、魔空空間が生まれたのは『ギャバン』の撮影事情のためだったことを明かしていました。

 吉川氏によれば、レインボー造型技術の創設者である前澤範氏が手がけたメタルのコンバットスーツは、あまりにも輝きすぎていたそうです。また、以下のようにもコメントしています。

「メッキの反射が凄すぎてね……。デザイン画の段階からカメラマンの瀬尾脩さんがひっくり返っちゃって『日光が反射して撮れないよ』って言うんですよ。そこをクリアするために魔空空間を考えたんです(中略)魔空空間はギャバンを外で普通に撮れない問題を、解消するのが第一目的だったんです。スタジオで撮るか、外でもフィルターをかけるか加工して暗くするとかしてね。上原さんに設定を考えてもらって、苦肉の策だったんですよ。ところがそれが評判になりましてね。『仮面ライダー』とは異なる大きな特色にまでなった。わかんないもんですよね」

 元祖『ギャバン』から40年以上を経た現在、撮影機材の性能が向上し、メタルスーツの撮影も容易になり、爆破もCGで処理されるため、このような苦労をしなくとも撮影が可能になりました。撮影事情から見れば、魔空空間は必要ないと言えそうです。

 しかし、往年のファンとしては、現在の技術で作られる「魔空空間」を見てみたい気持ちもあるはずです。『超宇宙刑事ギャバン インフィニティ』では、公開されている3人のギャバンについて、公式から「彼らはチームではなく別次元に存在…!」と言及がありました。最初に公開された本作ティザービジュアルを改めて見ると、「超次元英雄譚【Project R.E.D】」との文字があり、いくつかの次元をまたぐような物語展開が想像されます。はたして『ギャバン インフィニティ』で、「魔空空間」に相当する戦闘空間が描かれるのかどうか、引き続き情報解禁を楽しみに待ちたいと思います。

(LUIS FIELD)

【画像】「えっ」「そんなのあったのか」 これが、公開された『ギャバン インフィニティ』画像に仕込まれた、重要そうなキーワードです(3枚)

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LUIS FIELD

マンガやアニメをこよなく愛するライターが多く在籍する編集プロダクションです。幅広い年代が所属し、レトロ系から新作までおさえた「語りたくなる」記事を心がけています。

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