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明日の『ばけばけ』イセが「呪われた話」を語る 八雲が書いた実際の熊本の風習にまつわる「恐ろしい悲劇」とは

連続テレビ小説『ばけばけ』では、謎の女性・イセが語る話に注目が集まっています。

別の学者の本にも載っていた風習

吉野イセ役の芋生悠さん(28歳)プロフィール写真
吉野イセ役の芋生悠さん(28歳)プロフィール写真

 2025年後期のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』の第21週では、主人公「松野トキ(演:高石あかり)」ほか家族や同居人が、夫「レフカダ・ヘブン(演:トミー・バストウ)」の著作の題材となりそうなものを探しています。そんななか、トキは熊本のさまざまな言い伝えに詳しく、さらに「呪われている」という女性「吉野イセ(演:芋生悠)」と出会い、彼女をヘブンの元へ連れてきました。

 2月26日放送の第104話では、イセがトキに頼まれ、自分が呪われている理由を語るそうです。いったいどのような話をするのでしょうか。

 ネット上ではこのイセは、ヘブンのモデル・小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の短編『人形の墓』(1897年9月出版の『仏の畑の落穂』収録)に登場する少女「イネ」ではないかと言われています。『人形の墓』にはハーン本人と、トキのモデル・小泉セツの養祖父・稲垣万右衛門が登場し、家に招き入れた幼いイネから、その不幸な身の上話を聞くという内容です。

 イネはある村で両親と祖母、兄と妹の6人家族で暮らしており、表具屋の父と髪結いの母の稼ぎで裕福な生活をしていました。しかし、あるとき父が病死し、その葬儀の8日後に母もなくなってしまいます。すると、周りの住民たちはすぐに棺のなかにわら人形を入れた墓を作って供養しないと、イネの家にまた不幸があると言ってきたそうです。

 しかし、19歳のイネの兄は迷信だと思ったのか人形の墓を作りませんでした。すると、兄はしばらくして高熱を出して寝込み、母の死から49日目になると、彼は母が自分の着物の袖を引っ張っていると言い出します。その後、兄はなくなり、同年の冬に祖母も死去して、幼い妹はイネと別の家に引き取られて行きました。

『人形の墓』の最後、話を終えたイネはハーンが自分の座っていた場所の畳に座るのを止めようとします。自分が背負っている不幸を背負い込まないように、座る前にまず畳を叩いてほしいというのです。しかし、ハーンはそのまま畳に座り、万右衛門はイネに彼が「他の人の痛みを理解したいと思っている」ことを語りました。

 ハーンの東京帝国大学時代の教え子である田部隆次は、伝記『小泉八雲 ラフカディオ・ヘルン』で、『人形の墓』の話を実際に語ったのは熊本で雇ったお梅という身寄りのない女中の少女で、ハーンと一緒にそれを聞いたのは万右衛門ではなく、妻のセツだと語っています。『ばけばけ』では「クマ(演:夏目透羽)」が身寄りのない女中に当たりますが、彼女とは別にイセが自分の体験として『人形の墓』の話をするようです。

 この人形の墓にまつわる伝承は、かの有名な民俗学者・柳田國男の著書『葬送習俗語彙』(1937年発表)にも出てきます。日本各地の葬儀、埋葬などにまつわる習俗をまとめたこの本の「墓地の種類」という項には、「スラバカ(空墓)」に関する説明がありました。

 そこには、黒川村(かつて熊本県阿蘇郡にあった村)では、一家にふたり続けて死人が出ると3人続かないように人形を作って葬式をするという風習がある、と書かれています。『人形の墓』がどこまで本当にあった話かは分かりませんが、女中のお梅はこの黒川村で恐ろしく悲しい体験をしたようです。

『ばけばけ』第21週の予告では、トキが「呪われる」ことも語られていました。104話でイセの話を聞いた後、畳を叩かずに座って呪われてしまうのでしょうか。明日の放送に注目です。

※高石あかりさんの「高」は正式には「はしごだか」

参考書籍:『小泉八雲 ラフカディオ・ヘルン』(中央公論新社)、『八雲の妻 小泉セツの生涯』(潮出版社)、『仏の畑の落穂』(恒文社)、『葬送習俗語彙』(民間伝承の会)

(マグミクス編集部)

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