『ガンダム』ホワイトベースクルーの「その後」 スピンオフが描いた各々の人生模様
オペレーターや整備兵たちにも意外な「その後」が

さらにマンガ『機動戦士ガンダム ピューリッツァー ―アムロ・レイは極光の彼方へ―』(漫画:才谷ウメタロウ/脚本:大脇千尋/原案:矢立肇、富野由悠季/KADOKAWA)では、かつてWBで暮らしていた戦災孤児3人組のひとり、「キッカ」が主人公となります。大学生になったキッカは、「英雄ではないアムロ像」を描く伝記の執筆を決意し、カイの世話になり、彼の情報網や人脈を通じてセイラをはじめとする人々へたどり着いていくのでした。
この流れのなかでは、3人組のひとりだった「レツ」もさりげなく登場します。一方で、戦死した「カツ」の不在が改めて寂しさを感じさせる場面でもありました。
また、主役級とはほど遠かったクルーたちにも、意外なキャリアパスが用意されています。その代表例が「ジョブ・ジョン」でしょう。本編では影の薄い存在でしたが、数十年後を描く「機動戦士ガンダムF90」シリーズでは、海軍戦略研究所「サナリィ」に参加し、「ガンダムF90」開発を主導する幹部となっていました。
その縁から、WBの整備兵だった「オムル・ハング」にも光が当てられます。『デイアフタートゥモロー』では、オムルがジョブをサナリィへスカウトする場面が描かれており、ふたりとも「新たなガンダムの誕生」に関わる大出世を遂げているのです。
さらに意表を突いたのが、元WBオペレーターである「オスカ・ダブリン」の再登場です。『ピューリッツァー』では、「通常のザクの3倍」という印象的なセリフを残した彼の戦後の姿が描かれています。
オスカは『Z』時代にはカラバへ参加し、ティターンズ壊滅後は地球連邦軍情報局へ異動していました。ニュータイプ能力を恐れる連邦上層部によって厳重な監視下に置かれていたアムロやブライトを陰から支えるため、あえて軍内部に身を置いていたのです。
「ガンダム」シリーズでは、あくまで映像作品が正史とされる見方が一般的といえます。しかし、数々のスピンオフマンガで描かれたサブキャラクターたちの人生は、一人ひとりに確かな物語があることを感じさせます。そこには「雑草という草はない」と言うべき、生きることの重みが描かれているのです。
(多根清史)


