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『銀河鉄道999』の謎多き美女、メーテルの正体は? 少年を導いた「理想の女性像」

男性なら誰もが抱く「理想の女性」像

「機械の身体を手に入れる」旅を続ける鉄郎が終着駅に到達するところが描かれる、『銀河鉄道999』文庫版第12巻(少年画報社)
「機械の身体を手に入れる」旅を続ける鉄郎が終着駅に到達するところが描かれる、『銀河鉄道999』文庫版第12巻(少年画報社)

 少年から大人へと成長する過程にある鉄郎を、メーテルはいつも優しく見守っています。鉄郎が憧れるメーテルは、ダンテの『神曲』に登場するベアトリーチェのような存在です。ベアトリーチェは「永遠の淑女」とも呼ばれています。寂しげな表情をしたメーテルも、お嬢さまタイプのベアトリーチェも、男性が自分の脳内でイメージする「理想の女性」像ではないでしょうか。

 松本零士作品には『宇宙戦艦ヤマト』のスターシャや『男おいどん』のヒロインなど、切れ長の瞳をした絶世の美女がたびたび登場します。松本氏自身によると、若い頃に観たフランス映画『わが青春のマリアンヌ』(1955年)の主演女優マリアンヌ・ホルトや宝塚歌劇団に所属していた頃の八千草薫さんなど、松本氏が憧れていた人気女優のイメージを重ね合わせることで生まれたキャラクターだそうです。

 戦後の北九州市で育った松本氏は、高校を卒業し、プロの漫画家になるために単身で東京行きの夜行列車に乗りました。そして胸ポケットには、八千草薫さんの顔写真に手を加えたメーテルの原型となるものを忍ばせていたそうです。まさに銀河鉄道999に乗り、地球から旅立つ鉄郎と同じ心境だったのです。

 子供の頃に憧れていた女優やアイドル、初恋の女性のイメージ、母親の若かりし日の面影などが一体化することで、「理想の女性」像は誕生します。優しさ、強さ、知性をあわせ持ったメーテルは、至高の「理想の女性」像を具象化したキャラクターだと言えるでしょう。また、メーテルの声を演じていた池田昌子さんは、「永遠の妖精」と呼ばれた人気女優オードリー・ヘップバーンの吹き替えを務めていたことでも知られています。

物語の結末、明かされる美女のもうひとつの顔

 物語の後半、銀河鉄道の終着駅に到着した鉄郎は、メーテルの意外な正体、そしてメーテルが鉄郎を旅に誘った真相を知り、衝撃を受けます。メーテルは優しいだけの守護天使ではなく、男の人生を大きく変えてしまうファムファタール(運命の女)でもあったのです。メーテルの秘密を知ったことで、それまで純真無垢な少年だった鉄郎は、否応なく大人へと成長を遂げます。それは大人への一歩手前を意味する数字「999」が、「0」になった瞬間でもありました。

 国内興収が360億円を超える記録的大ヒットとなった『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』と『銀河鉄道999』は、鉄道をモチーフにしている他にもいくつか共通する要素があります。

 鉄郎は永遠の命が保証された機械の体を手に入れるために旅立ちましたが、旅を続けていくうちに永遠の命よりも尊いものがあることに気づきます。

『無限列車』も鬼殺隊の最強剣士のひとり「炎柱」煉獄杏寿郎が、永遠の命を持ちかける鬼の猗窩座(あかざ)と死闘を繰り広げるシーンがクライマックスとなっています。『銀河鉄道999』も『無限列車』も、一瞬の時間を懸命に生きることは永遠の命と同価であることを物語っています。

 メーテルが至高の「理想の女性」像なら、「強く生まれし者の責務」をまっとうする煉獄杏寿郎は最強の「理想の男性」像だと言えるでしょう。『銀河鉄道999』の鉄郎も、『無限列車』の主人公・炭治郎も、心の痛みを乗り越えることで本当の大人へと成長を遂げることになるのです。少年の旅立ちは、多くの人を魅了する永遠のテーマでもあるようです。

(長野辰次)

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