「MILLION TAG」に参加する編集者・玉田さん「6組のバトルロイヤルは作家を急成長させる」?
『SPY×FAMILY』『怪獣8号』『終末のハーレム』など数々のヒット作を生み出している「少年ジャンプ+」は、マンガ誌アプリのなかでますます大きな存在感を示しています。この2021年には、集英社の編集者と挑戦者がタッグを組んで優勝を目指す新たな漫画賞「MILLION TAG」が開催されます。引き続き、企画に参加する編集者たちの声を紹介します。
漫画家との「宝探し」を支える、たくさんのコミュニケーション

マンガ誌アプリ「少年ジャンプ+」が、次世代のスター漫画家を発掘することを目的とした新漫画賞「MILLIONTAG」を発表し、挑戦者を募集しています。漫画家と編集者がタッグを組んで課題に挑み、その様子を動画で配信。優勝者は賞金500万円を手にするほか、「少年ジャンプ+」での連載やコミックスの発売、そしてアニメ制作も確約(1話分相当がYouTube「ジャンプチャンネル」で配信)されるなど、異例づくしの企画です。
挑戦者とタッグを組む編集者のひとりである「少年ジャンプ+」編集主任の玉田純一さんは、「ジャンプSQ.」編集部在籍時に、『双星の陰陽師』(作:助野嘉昭)、『大正処女御伽話』(作:桐丘さな)を担当し、現在おもに『生者の行進 Revenge』(作:みつちよ丸・佐藤祐紀)などの作品を担当しています。漫画家との企画づくりを「宝探し」と表現する玉田さんにお話を聞きました。
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ーー玉田さんは面白い作品を生み出すために、担当の漫画家どのようなやりとりを心がけていますか?
玉田さん(以下、玉田) 漫画家さんによって異なりますが、共通するのは彼らの強みを知ることです。漫画家さんが「やりたいこと」を聞くのはもちろん、それ以上に「その漫画家ができること」「他の漫画家より優れているもの」は何かを、真剣に考えます。しかし、僕ひとりで考えても意味がありません。そのため漫画家さんには、「漫画家になるきっかけ」や、「どんなことに興味を持って、マンガを作ろうとしているのか」など、ありとあらゆることを聞いて、相手の「人間そのもの」を知ろうとします。そのため、編集者というのはインタビュー力が高い人が向いていると思いますね。
ーー「MILLION TAG」では、漫画家を目指す方々とどう向き合っていきたいですか?
玉田 普段新人漫画家さんと接するよりも、かなり短い時間でしっかりコミュニケーションを取らないとな……と感じます。相手への質問で人となりを知るにしても、僕の思いを伝えるにしても、ものすごく密なコミュニケーションが必須になるでしょうね。
ーー普段だと、どれくらい時間をかけて作品を世に出していますか?
玉田 たとえば連載のネームを作り、連載企画を形にして編集部に回すだけでも、最短で3か月、長いと半年かかります。読切から数えると、ここだけで1年かかることも珍しくありません。「週刊少年ジャンプ」で『ミタマセキュ霊ティ』を連載していた鳩胸つるん先生も、連載までに6、7年かかっています。
ーーかなり時間をかけて作品を作り上げていくんですね。
玉田 どの漫画家さんも、力をつける時間が必要だと思います。仮に力をつけた後も、ハマる企画やアイデアを探す時間が必要です。逆にこの部分をすぐに生み出せた場合は、半年で連載が始まることもあります。
これを、僕は「宝探し」と表現しています。企画・アイデアというのは、画力があれば順当に見つかるというものではありませんから。
ーー玉田さんは「MILLION TAG」にどのような期待をされていますか?
玉田 やったことがないので、シンプルに面白そうですよね。あとは、編集者がどういう仕事をしているのかを見せることで、世の漫画家を目指す方々が作品を生み出すヒントになればいいと思います。「あ、そういう作り方もあるんだな」みたいに。
僕自身、自分の担当外の企画や作品からしょっちゅう刺激をもらっています。同じことを僕自身はできないので、「この作品のなにが面白いのか?」を探って、そのエッセンスを担当の漫画家さんとの打ち合わせで話してみることもあります。「こういう切り口をやってみるのはどう?」といった感じで。
ーーやはり、マンガを読むときは編集者目線で分析しているんですね。
玉田 はい。ただ、普通にマンガを読んでいるときは、いち読者として楽しんでいますよ。そのなかでこれは面白い!と感じたら、編集者として持ち帰るようにします。はじめから編集者としてあれこれ考えながら読むと楽しくないですから(笑)。