「金ロー」初放映の『ザ・ファブル』 原作ファンから異論も、新作ではジレンマを克服?
原作ファンが抵抗を感じた理由とは?

岡田准一さんのアクションシーンは高く評価されたものの、原作ファンの一部からは厳しい声もありました。ファブルは都市伝説級の殺し屋であり、どんな相手も6秒以内に仕留めてみせるプロ中のプロです。そのため、誰にも気づかれずにいる影のような存在なのです。
しかし、実写版では目出し帽を被っているとはいえ、ファブルは大勢の前に姿をさらし、大乱闘することになります。原作に比べ、大幅に増員された武装集団と闘います。ファブルの強さを強調するためのこの演出に、原作ファンは抵抗を感じたようです。
ファブルが派手に活躍すればするほど、原作で描かれた都市伝説の男・ファブルのイメージから離れてしまうというジレンマを、実写版は抱えていたのです。
原作者・南勝久氏のスタンス
原作者の南勝久氏は、実写映画版をどのように受け止めているのでしょうか。新作『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』では、南氏は脚本段階から打ち合わせに参加したそうです。映画の公式ホームページには「何もかもが前作を凌駕した岡田准一氏の身体能力と格闘センスに脱帽。堤真一氏のウツボは原作よりも、さらに人間味が溢れていた―」という南氏のコメントが掲載されています。
スタッフ&キャストが第1作に満足することなく、多くの人が楽しめるエンターテイメント映画としてより進化を遂げたことで、原作者からのお墨付きがもらえたと言えるのではないでしょうか。
日本、とくに東京都は道路規制が厳しく、カーアクションを公道で撮ることができません。『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』ではそのことを逆手に取り、立体駐車場という限られた空間で緊張感あふれるカーアクションに挑戦しています。原作コミックではわずか数コマのシーンですが、走行車に対する岡田さんの超絶スタントは必見ものです。
他にもヨウコ役の木村文乃さんが見せるセクシーな格闘シーン、前作以上にド派手な「団地パニック」シーンなど、多くの見どころが『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』には用意されています。また、元欅坂46の平手友梨奈さん演じる車椅子の少女・ヒナコの葛藤と成長がドラマの大きな縦軸となっており、より人間味を増したファブルの物語にぐいぐいと引き込まれていくことになります。
原作コミックの力を借りて、日本映画にはかつてなかったアクションシーンの数々に挑んでみせた実写版「ザ・ファブル」シリーズ。まずは「金ロー」で、岡田さんの体を張ったスタントと脱力系ギャグを味わってください。また、実写版をご覧になった人は、原作コミックもぜひ手に取ってみてください。実写版とは違った、よりブラックでハードな味わいが楽しめるはずです。
(長野辰次)
●『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』
2021年6月18日(金)より全国公開。
原作/南勝久 監督/江口カン 出演/岡田准一、木村文乃、平手友梨奈、安藤政信、黒瀬純、好井まさお、橋本マナミ、宮川大輔、山本美月、佐藤二朗、井之脇海、安田顕、佐藤浩市、堤真一
配給/松竹