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『鬼滅の刃』我妻善逸のヘタレっぷりと魅力とは? 泣き顔シーン5選

『鬼滅の刃』の我妻善逸は、主人公の炭治郎の鬼殺隊の同期のひとりで、「やればできる子」を地で行く作品きってのヘタレであり、愛されキャラでもあります。情けないところと鬼を倒すかっこよさのギャップが見る人の心をとらえるのでしょう。善逸の魅力を引き立てる、ヘタレた泣き顔の見られるシーンを5つ選んでご紹介します。

泣いてばかりの善逸を、なぜ応援したくなるのか?

(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

 我妻善逸(あがつま・ぜんいつ)は、『鬼滅の刃』の主人公・竈門炭治郎(かまど・たんじろう)の鬼殺隊の同期のひとりで、作品きってのヘタレであり、愛されキャラでもあります。

 育手のもとで修行を積み、最終選別を生き抜いた鬼殺隊の隊士であるにもかかわらず、善逸は臆病で心配性……。雷の呼吸の6つの型のうち、善逸が扱えるのは「壱ノ型 霹靂一閃(へきれきいっせん)」のひとつだけであるため、自己肯定感はかなり低めでネガティブ発言が多めです。

 ところが、そんな善逸は、「週刊少年ジャンプ」で行われた「第一回キャラクター人気投票」では、第2位。続く、第二回では第1位を獲得しています。なぜ、善逸は、そんなに人気が高いのでしょう?

 それは、彼が「やればできる子」の代表だったからではないかと考えます。普段のヘタレっぷりと、いざ鬼と戦う際の研ぎ澄まされた(実際には善逸は極度の緊張と恐怖で気を失っていますが……)かっこよさのギャップが見る人の心をとらえたのでしょう。どんなになさけなくても、ダメダメでも、最後の最後、土俵際で踏ん張れるのが善逸の強さ。その強さを知っているからこそ、ベソベソ泣いても、ヘタレ発言を連発しても、むしろそれがあるからこその善逸の魅力を引き立てているとすら考えられるのです。

 この記事では、善逸の魅力の引き立て役になっている、ヘタレた泣き顔の見られるシーンを5つ選んでご紹介します。

●鼓屋敷へ:プロフィール泣き

 鬼殺隊の最終選別の場にも善逸の姿はありますが、本格的にストーリーと絡んでくるのは炭治郎が本部の指令に従って鼓屋敷に向かう道中からです。その時の善逸の姿はというと、道の真ん中で女の子にすがりついて、「結婚してくれ」と泣きわめいている情けなさ全開のシーンです。女の子はもとより、善逸についている鬼殺隊本部との連絡役の鎹雀(かすがいすずめ)も困って炭治郎に助けを求めるほどでした。

 善逸の耳の良さは、相手の考えていることも分かるという読心術並みのもの。にもかかわらず、彼は「信じたいと思う人」を信じるため、よく人にだまされ、女運も最悪だったようです。鬼殺隊の隊士になったのも、女にだまされてできた借金を肩代わりしてくれたのが育手だった……という、とても場当たり的なものでした。

 善逸が道ですがっていた女の子も、炭治郎が間に入って善逸が少しだけ落ち着くと、善逸に対して激しいビンタを連発し、驚いた炭治郎にあわてて止められます。これも善逸の女運の悪さゆえでしょうか……。

 完全に失恋した善逸を残念そうに見る炭治郎に、「やめろーっ! 何でそんな別の生き物見るような眼で俺を見てんだ」と、目を見開き、涙ホロホロ+鼻水で叫ぶ善逸。女の子に弱い、思い込みが激しい、進んで鬼殺隊士になったわけではない、臆病、小心者……など、善逸のパーソナルな情報がいろいろ盛り込まれたシーンですが、ほぼずっと泣きっぱなしというところで、彼の「泣きキャラ」が印象づけられています。

●鼓屋敷にて:一般人の少年よりガクブルし泣きわめく

 鼓屋敷では善逸は兄を鬼にさらわれた少年、正一と行動を共にしますが、鬼に遭遇する前から恐怖と不安で正気でいられないほど……。

 正一が話しかけただけで、驚きすぎて尻もちをついたかと思うと、正一に抱きつき、涙と鼻水を垂らしながら、「心臓が打ちからまろび出るところだった」と、ガタガタ震えるしまつでした。

 そして、そんな善逸の大騒ぎのせいで鬼に見つかると、ここであの有名な「ア゛―ッ(汚い高音)来ないでェ!!」のセリフが善逸の口から、ほとばしります。ただ、このときは充血した白目に大量の汗で、涙は流していません。

 そして、長い舌で攻撃してくる鬼から逃げ惑う善逸ですが、よく見れば、正一を抱えて守っているし、自分の身を犠牲にすることもいとわない様子で、自分が彼を守ることを心に誓うところも描かれています。

 しかし、舌の長い鬼が目の前に登場すると、脳内の「恐怖と責任感」がはじけてしまい、いきなり眠ってしまい、焦る少年をよそに、「雷の呼吸」の使い手としての善逸が前面に出て「壱ノ型 霹靂一閃」を繰り出し、舌の長い鬼を倒すのでした。

 この鼓屋敷のシーンでも、善逸はほとんど怯えて泣いていたりパニックになっていたりするのですが、怯えながらも少年を守る優しさや、鬼を倒す時の予想外の凛々しさや強さで、不細工に泣きまくる善逸のもうひとつの顔を知ることができるのです。

●那田蜘蛛山にて:最悪の鬼との遭遇と涙

 本部の指令を受け、炭治郎、伊之助とともに那田蜘蛛山に来た善逸はふたりとはぐれ、蜘蛛の胴体に人間の頭が付いた兄役の鬼と遭遇してしまいます。

 そして、蜘蛛になる毒を注入されると恐怖に震え、蜘蛛人間の姿になるのは嫌だと、木に登って泣きじゃくる姿は、長く垂れ下がった鼻水と相まって、善逸のヘタレっぷりを見せつけるのです。しかし善逸には、鼓屋敷で舌の長い鬼を一瞬で倒した実績があり、そんな彼の強さを覚えているだけに、いつ善逸が覚醒するのかと、ついつい「やればできる子」を応援する気持ちになる人は多いはず。善逸自身も、「俺は 俺が一番 自分のこと好きじゃない ちゃとやらなきゃって いつも思うのに 怯えるし 逃げるし 泣きますし」「変わりたい ちゃんとした人間になりたい」と願っています。だからこそ、このシーンでは、泣きじゃくる善逸が愛おしい、応援したいと思う気持ちが読者に芽生え、それが人気投票での1位獲得につながったのではないでしょうか。

※これ以降、まだアニメ化されていないシーンの記載があります。原作マンガを未読の方はご注意ください。

善逸の成長で、涙も変化していく……

●遊郭にて:隊士としての成長と変わらぬ涙

 音柱・宇髄天元(うずい・てんげん)の妻を救出するため、遊郭に潜入することになった善逸と炭治郎、伊之助の3人。善逸は花街で美しい花魁を見て、それが天元の妻なのかと、ねたみ、うらやんで涙を流すほどで、相変わらず女性への執着が強いことがうかがい知れます。

 天元が怪しいと目をつけている店に少女として雇われる作戦なのですが……善逸が女装した善子(ぜんこ)だけは売れ残ってしまい、結局、天元の男前ぶりで遣手婆を落として店に押し込んだのでした。その悔しさで歯を食いしばって涙を流す善子(=善逸)は、売れ残るのも仕方ないくらい不細工なのでした……。

 この戦いにおける善逸は、伊之助も驚き、称賛するほどクリアで闘志がみなぎっています。剣士としても上弦の陸を相手にひと皮も、ふた皮も剥けたと言えるでしょう

 それでも戦いが終わって、炭治郎に両足の痛みを訴え、「誰にやられたのコレ 痛いよおお 怖くてみれないい」と涙と鼻水にまみれて泣く善逸はいつもと変わらず情けないのですが、成長ぶりを見た後は、それがちょっとうれしいような気分になります。

●無限城にて:爺ちゃんの幻に涙

 最終局面を前にして、皆が柱稽古に励むなか、善逸には厳しい便りがもたらされます。善逸は自分のありようについて心を決めたようで、これまでの彼とはまとう空気が変わっていました。

 そして迎えた無限城の戦いで、善逸はかつて兄弟子であった獪岳(かいがく)に遭遇。獪岳が鬼に堕ちた責任をとって善逸たちの育手は切腹し、善逸はそれを許せませんでした。

 獪岳との戦いで生死の境をさまよっていた善逸は、川の向こう岸に立つ育手に遭い、涙ながらに思いのたけをぶつけます。すると、育手も「お前は儂の誇りじゃ」と涙を見せ、現実世界で死の淵をさまよう善逸の目にも涙が浮かぶ名シーンです。

* * *

 臆病で後ろ向きな少年、善逸が、次第に強く優しい青年に成長していくのは、見ていて頼もしいし、うれしいものです。善逸が愛されるのは、育成の楽しみがあるからなのかもしれません。

(山田晃子)

【画像】霹靂一閃を再現!本格的・善逸の日輪刀(5枚)

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