『鬼滅の刃』堕姫は「天国に行ける」可能性があった? 妓夫太郎の想いを読み解く
大正時代風の日本を舞台として、鬼殺隊と人を喰らう鬼との戦いを描く『鬼滅の刃』。アニメ「遊郭編」には、ラスボスとして上弦の鬼「堕姫」と「妓夫太郎」が登場します。元々、遊郭に生まれ、悲劇的な人生を送ったこのふたりが最後に見た走馬灯は、物悲しく、考えさせられる内容でした。
「遊郭編」で感じた妓夫太郎兄妹への違和感

『鬼滅の刃』に登場する鬼は、その多くが人間だったときの記憶を持ちません。しかし、頸を斬られて倒された時には、鬼の王・鬼舞辻無惨の精神支配から解放され、人間だったときの自分を思い出すことが多くあります。
「上弦の陸(ろく)」である「堕姫」と「妓夫太郎」兄妹も、そうした鬼です。妓夫太郎は、遊郭の吉原で生まれ、容姿の醜さから忌み嫌われていました。妓夫太郎の妹である堕姫こと「梅」は、美しい容姿であり、兄は妹を誇りにしていました。
妓夫太郎は借金などの取り立てを仕事としながら、妹を養っていました。しかし、梅が13歳になったときに、悲劇が起こります。遊郭の座敷で、梅が妓夫太郎を馬鹿にした客の侍に腹を立て、カンザシで目を突いたのです。
梅は報復のために縛られて、生きたまま焼かれます。妓夫太郎は侍を殺害しましたが、刀傷を負って倒れました。瀕死のふたりのところに現れたのが、当時「上弦の陸」であった鬼でした。上弦の鬼に血を与えられたことで、妓夫太郎兄妹は鬼になったのです。
ところが、この設定を踏まえると、筆者には違和感を持つことがあります。
「遊郭編」の最後で頸を斬られたことで、記憶を取り戻した妓夫太郎は、梅に「お前とはもう兄妹でも何でもない。俺はこっちに行くから、お前は反対の方。明るい方へ行け」と指示しているのです。