マグミクス | manga * anime * game

最近の『ファイアーエムブレム』は「ぬるくなった」はホント? 重すぎる死の変遷

「ぬるくなった」と言えないワケ

序盤は比較的穏やかな『風花雪月』。しかし、第2部が幕を開けると、そこには過酷な戦いが……
序盤は比較的穏やかな『風花雪月』。しかし、第2部が幕を開けると、そこには過酷な戦いが……

●1作目にもあった「死を回避する手段」

「カジュアルモード」が搭載された『新・紋章の謎 ~光と影の英雄~』以降の作品群を指し、死の重みが薄れたと指摘する声があります。ですが、こうした時代よりも前から、「死」を回避できる対応はありました。

 そもそも1作目の『暗黒竜と光の剣』の時点で、実は死亡したキャラを生き返らせる救済措置が用意されています。復活の杖「オーム」を使えば、死亡した仲間を蘇生することが可能でした。

 しかし、この「オーム」が手に入るのは終盤ですし、使える場所も最終面のひとつ前と限られています。また、対象のキャラが十分に育っていなければ、次の最終面で出番が回ってこない可能性はかなり低くなります。死を回避する手段そのものはあっても、「これがあるから死んでも大丈夫」とはいきません。そうした点を考慮すると、蘇生手段があっても「死」の重みは変わらず、と捉えることもできます。

 一方で、物語の展開上で欠かせない一部のキャラが死んだ場合、「ゲームオーバー(=対象キャラの死を、やり直すことで強制的に回避)」もしくは「戦闘からは離脱するが、死亡はせず物語にだけ参加」という形になる場合もあります。

 ゲームオーバーや戦闘に参加できない状態は明確なデメリットなので、これも「死」の重みと言えるかもしれません。が、「死を回避する(もしくはさせられる)」システム自体は、限定的ながらも昔から存在していたのです。

●最新作の展開に、重すぎる「死」の手応えが潜む

 本シリーズでは「死の重み」を描いていますが、それは「ユニットの死亡」のみで表現されているわけではありません。愛する者と道を違えた悲劇や、報われぬ戦いの結末など、状況や物語を通した形での「生と死」も紡いできました。

 黎明期だと、特に『ファイアーエムブレム 聖戦の系譜』が印象的です。こちらの作品は2部構成ですが、1部終了時点で大きな悲劇に見舞われ、第2部では登場キャラクターの大半が一新される形で幕を開けます。具体的な理由は伏せておきますが、この衝撃的な展開を前置きなく味わった当時のユーザーは、大きな衝撃を覚えたものです。

 死を伴う絶望的な展開も描いてきた「ファイアーエムブレム」シリーズですが、その傾向は昨今薄れてしまったのか。この点について、シリーズ中で最も新しい『ファイアーエムブレム 風花雪月』に迫ってみます。

『風花雪月』はシリーズのなかでも珍しく、前半は士官学校での日々を描いています。在学中に出撃する場合もありますが、そのほかは生徒たちの訓練や日常、コミュニケーションなどを行って過ごします。また、主人公は教師となり、生徒を導く立場として彼らと接点を持ち、関係性が育っていきます。

 出撃の際に「死」の危険(クラシックモードの場合)があるとはいえ、戦争が中心だった『FE』シリーズ全般と比べると、かなり穏やかな印象を受けます。こうした切り口を見て、「ぬるくなった」と判断するユーザーも一部にいました。

 しかし、『風花雪月』が「ぬるい」ゲームなのかと問われれば、個人的には全く同意できません。というのも、後半に突入することで、この世界にも大規模な戦争が訪れます。それは同時に、「学級こそ異なるものの、生徒同士が戦場で殺し合う」という地獄の始まりでもありました。

 かつての生徒たちは、それぞれ出身や立場に合わせて戦争に加わります。当然、全員が同じ陣営に属することはあり得ません。どれだけ手を尽くしても、生徒同士の戦いの全てを回避する術はなく、同じ場所で学んだ者同士による命の奪い合いがいずれ始まります。

 ただし、生徒同士の直接の対決を避ける方法も、あると言えばあります。生徒の代わりに自分が……教師だった主人公が、敵対する生徒と戦うことで、生徒同士の殺し合いは避けられます。もちろんそれは、「かつて先生と呼んでくれた相手を、自分の手で殺める地獄」に変わるだけの話に過ぎません。

 戦争に絶対の正義はなく、同時に絶対の悪もありません。だからこそ、全員が同じ道を歩めるはずもなく、死を伴う決別こそが彼らの関係に残された最後の接点なのでしょう。

 こうした形の「死」は、受け止める側にとって賛否が分かれます。それは好みの問題でもあるので、どちらも正しい感想に他なりません。ですが、昨今の「FE」シリーズがぬるいかどうかと問われれば、この『風花雪月』の一例だけで見ても、ぬるさとは対極の位置にあると言っていいでしょう。

「カジュアルモード」や更にパワーアップさせた「フェニックスモード」の存在によって、本シリーズにおける「生」の価値は少し変わったかもしれません。ですが、「死」の重みと過酷さは、「クラシックモード」と物語のなかに今も力強く息づいています。そんな名シリーズの魅力を、あなたも直接味わってみてはいかがですか?

(臥待)

【画像】歴代「ファイアーエムブレム」で好きな作品は?(5枚)

画像ギャラリー

1 2