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同人・キャラグッズ販売「とらのあな」が直営店舗大量閉店の理由 ファンに激震が走る

直営店閉鎖の影響は?

同人誌即売会に行けないファンも同人誌と出会える場だったが…(画像:写真AC)
同人誌即売会に行けないファンも同人誌と出会える場だったが…(画像:写真AC)

 直営店がほぼ閉鎖されたと言っても、リアルでのショップそのものが消えるわけではありません。とらのあなでは2019年から書店に販売コーナーを設ける「Shop in shop」やイベントでの出店を行なう「Pop-up Store」といった「in shop事業」を展開しています。2022年第四四半期には16のin shopが存在しており、場所も北海道に2店舗、関東に5店舗、東海地方は7店舗、中国地方に1店舗、九州に2店舗と、全国への広がりを見せています。今後もさらなる店舗数の拡大が発表されており、とらのあなのブランドはリアルでも健在です。

 このようにとらのあなは固定費の削減を推し進めつつオンライン事業を拡大する方向で動いており、企業としては順調な状況にあります。ただし直営店を失った影響がどうなるかは未知数な部分があるのも事実です。

 まず重要なのが、近年とらのあなは競合のメロンブックスに押されつつあったという点です。

 コミックマーケットなどの同人誌販売イベントでは売れ残った同人誌やグッズを回収し、そのまま委託するサービスがありますが、2021年末に開催されたコミックマーケット99を筆者が取材した際に、メロンブックスの委託受付所は行列ができていましたが、とらのあなの委託所はそれほど人がいなかったのを確認しています。

 これは同人作家にとって最優先されるのはメロンブックスであることを示しており、とらのあなの存在感が低下していることを意味しています。この状況下でのリアル店舗の閉鎖は、作家の心理にプラスの影響を与えるとは考えにくい部分があります。

 また、リアルの店舗の場合はさまざまなジャンルの作品が所狭しと並べられており、興味のある本を買うだけではなく、ちょっと興味を引かれた目的外の本やグッズを購入する機会も存在していました。しかしオンラインでの購入は最初から興味のある作品や作家の本をそのまま買うだけのパターンに陥りがちで、知らない本を目にする機会が極端に少なくなる傾向にあります。

「in shop」は書店の一角などを借りて同人誌を陳列する形式のためスペースはそれほど大きくはなく、売れ筋の本を優先することになるため、同人誌が持つ大きな魅力であるすそ野の広さを生かすのは難しいと思われます。

 とはいえ、とらのあなはそのあたりの状況やデメリットは承知の上でリアル店舗の閉鎖に踏み切ったと思われます。果たしてこれからの同人誌界をどのように生き抜いていくのか、とらのあなの決断の行く末に注目したいところです。

(早川清一朗)

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