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『ベルサイユのばら』新作アニメで描いてほしい「ときめきシーン」4選

ルイ16世とマリー・アントワネットの最期は?

白バラの人、オスカルが表紙に描かれている『ベルサイユのばら』Kindle版第1巻(著:池田理代子)(フェアベルコミックス)
白バラの人、オスカルが表紙に描かれている『ベルサイユのばら』Kindle版第1巻(著:池田理代子)(フェアベルコミックス)

●ジェローデルの「愛の証」

 ジェローデルからオスカルへの求婚のエピソードも、原作マンガとTVアニメでは大きく異なった描かれ方をしています。貴族であるジェローデルは結婚相手としては申し分ありませんし、仕事のうえでもオスカルのライバルになりうるほど有能でした。そして彼はオスカルに対して次第に愛情を抱くようになっていったのです。

 そんなジェローデルはオスカルに正式に求婚した、ただひとりの男性です。原作マンガでは、オスカルと身も心も結ばれた後であっても、アンドレは身分の違いを承知して求婚はしておらず、「アンドレ この戦闘が終わったら結婚式だ」とオスカルからアンドレに告げています(TVアニメでは、アンドレの絶命シーンでオスカルから結婚式の話をしています)。
 しかし、ジェローデルは違います。自分からオスカルの父ジャルジェ将軍にかけあっているのです。それを考えると優しく穏やかでかつ、強さも持ち合わせた人物なのでしょう。原作マンガでは、身の引き方も紳士的かつオスカルへの思いにあふれたもので、筆者は大人になってあらためて彼の魅力に気づきました。このジェローデルの「愛の証」のセリフは、大人になった今こそ、じっくり聞きたいものです。

●王と王妃の毅然とした最期

 最後に取り上げるのは、「ときめきシーン」ではありませんが非常に重要なシーンです。オスカルの死後のフランスでの出来事については、TVアニメではアランやロザリーの回想によって話が進められます。そのため、王と王妃の死がさみしく、あわれでみじめに見えてしまうのです。

 特にルイ16世については、愚鈍で弱腰な人物と言われてきましたが、近年見直しが進んでいます。テュイルリー宮殿襲撃の際は、王が落ち着いていて、勇気を見せたからこそ国王一家は虐殺を免れたとも言われていますし、家族に対して優しく大きな愛を持った人物だったようです。

 王妃もけっしてフェルゼンとあけすけにラブストーリーを繰り広げていたわけではありません。お互いの立場を理解し愛するからこそ、簡単にいわゆる不倫関係には至れなかったとも言われています。そして新作劇場アニメでじっくり描いて欲しいのは、ルイ16世とマリー・アントワネットの最期です。

 断頭台に送られる人のなかには、泣きわめいたり暴れたりする人も多かったようですが、彼らは断頭台に登っても最期まで王らしく、そして王妃らしい態度であったといいます。『ベルサイユのばら』が、ただ恋愛物語ではなく、歴史を描いた作品だからこそ、ふたりの最期は大きな意味を持つと思うのです。

 TVアニメでは、原作マンガよりもアンドレが前面に出ていて、オスカルが市民側についた理由など、原作マンガとは大きく異なる部分があります。新作劇場アニメでは原作マンガ寄りになるのか、TVアニメ寄りになりのか、それとも新たなオリジナル脚本なのか……楽しみに待ちましょう。

(山田晃子)

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