実在した『ベルばら』キャラのモデル3人の末路。現実はマンガより悲劇だった……
少女マンガの名作『ベルサイユのばら』は、実在の人物と架空の人物が混在する作品です。フランス革命のなか、悲劇的な最期を迎えたのは、王妃マリー・アントワネットだけではありませんでした。『ベルばら』登場キャラクターのモデルとなった人びとの、思わずゾッとする、マンガよりも悲劇的な最期をご紹介します。
民衆に恨まれ、撲殺された紳士
革命前後のフランスを舞台に描かれた名作マンガ『ベルサイユのばら』には、実在の人物と架空の人物が混在しています。男装の麗人、オスカルと彼女を支え続けたアンドレの悲劇的な最期に涙した方も多いでしょうが、実はマンガよりも悲劇的だったのが、実在する人物たちの最期でした。
断頭台の露と消えた王妃、マリー・アントワネットの激動の生涯についてはよく知られていますが、彼女が愛したスウェーデン貴族、ハンス・アクセル・フォン・フェルゼンが迎えた悲惨な最期については、ほとんど知られていません。
今回は、『ベルサイユのばら』に描かれている実在の人物のなかから、3人の悲劇的な末路をご紹介します。
●ハンス・アクセル・フォン・フェルセン:アントワネットを愛した末に…
『ベルサイユのばら』では、「フェルゼン」という表記になっていますが、言語によるFersenの発音の違いによるもので、一般的には「フェルセン」と表記されているため、記事中では「フェルセン」とします。
ハンス・アクセル・フォン・フェルセンは、スウェーデンの名門貴族に生まれた、イケメンのエリートです。フランス留学中には、紳士的で男らしい彼に恋する女性も多くいたようで、マリー・アントワネットもパリ、オペラ座で開かれた仮面舞踏会で出会った彼に好意を持ち、その後、親密な関係になっていったと言われています。
マンガでのフェルセンは、アンドレがマリー・アントワネットに偶発的な事故でケガをさせた際、オスカルとともにアンドレをかばい、「正義のために死ねるぞ」と国王にたてつく男気を見せました。
史実においても、フランス革命が起こって国王一家が窮地に立たされてからもフェルセンは、愛する人とその家族を救うために男気を発揮します。彼はスウェーデン国王、グスタフ3世やオーストリア駐在大使に協力を求めるなど奔走しましたが、計画はことごとく失敗。1793年10月、マリー・アントワネットは革命政府によって処刑されてしまったのです。
愛する人を失ったフェルセンは絶望し、冷酷で愛想のない暗い人間になってしまったと言われています。そして、愛する人を死に追いやった民衆への憎悪の気持ちをつのらせるようになり、民衆に対して弾圧的なふるまいが多くなったせいで、民衆からも恨まれるようになっていきました。
1799年には元帥にまで昇進。スウェーデン国政にも携わるほど、権力を持つようになりましたが、1810年に急死した王太子の葬儀執行役として、葬儀会場であったストックホルム市内の広場に彼が馬車で現れると、群集が石を投げ始め、暴動が起こったのです。
同行していた副官が近衛連隊に群衆の制圧を命じましたが、近衛連隊は命令を拒絶し、副官はフェルセンを連れて建物に隠れるしかありませんでしたすると暴徒と化した群衆はその建物に侵入し、フェルセンを見つけると、こん棒で彼を殴打し、踏みつけ、命を奪ったのです。
マンガ『ベルサイユのばら』の最後のページには、民衆に撲殺され、血を流して冷たい石畳に倒れているフェルゼンの姿が描かれていますが、実際には、フェルセンの遺体は裸のまま排水溝の中に投げ捨てられるという、マンガよりもっと悲惨な最期でした。マリー・アントワネットとフェルセン、深く愛し合ったふたりの最期がそろって、民衆からの憎悪によるものだというのは悲しすぎますね……。