声優にかかる、ギャラに見合わない過重な負担 廃業や降板が起きる理由【この業界の片隅で】
作品人気の「属人化」による精神的な重圧
コロナ禍で激減したもののひとつとして、顔出しのアニメイベントも挙げられます。詳細は割愛しますが、顔出しのイベント出演料は、アニメ自体の出演料とは違った基準で設定されていて、新人声優でもそこそこの額を受け取ることができます。これまでは「アニメで良い役をつかむことで名前を売り」「顔出しのイベントを中心に出演数を増やすことで稼ぎながらキャリアを伸ばしていく」という図式も成り立っていました。それも、かなりの部分で崩れてしまったと言わざるを得ません。
また、製作側がキャスティングを行う際に、候補の声優がSNSを中心にネットでどれだけ数字を持っているかを重視する傾向が強まっています。特に、北米やヨーロッパのマーケッターは、その声優がタレントとして出した写真集についている販売サイトのレビューの数や内容まで、ビジネス上の判断材料として集めています。もちろん、「この役を演じられる声優はこの人しかいない」という制作現場の声が一番強い事実は揺るがないのですが、それでも、製作委員会への出資者を募る時など、マーケッターの声を無視できない局面は多々あります。
「この人気作に出ている声優」ではなく、「こんな人気声優が出ている作品」というふうにとらえる属人的な傾向が、業界内で強まっているというわけです。本来は裏方仕事のはずだった声優に、現状のギャラには明らかに見合わない、過重な負担を与えている状況です。
俳優として声の演技に集中したいだけなのに、ある日突然「お前の一挙手一投足が作品人気に影響を与える」などと、日常生活まで制限されるようなことを言われたりしたら、どんなふうに感じるでしょうか? 「それなら顔出しの仕事は拒否します」と宣言して持ち役から降りたり、あまりにも生真面目で大人しい性格だったりすると、心身に変調をきたすほど思い悩んでもおかしくはありません。
いわゆる顔出しのタレントのギャラが高額なのは、「作品人気を背負う責任への対価」も含まれているからです。声優の場合、この点に不分明さが残っているのは否定できないでしょう。
コロナ禍の影響で過渡期にある声優業界が、今後どのように変わっていくか、VTuberをからめて語れそうな気もしますが、それはまたの機会に譲りたいと思います。
(おふとん犬)



