『ガンダム』「坊や」と馬鹿にされがちなガルマ 実はジオンの「救世主」となりえた?
ガルマにしかできない重要な役割とは?
ガルマはその若さゆえに権力基盤がなく、兄妹と利害の対立がありません。父王デギンの寵愛を受け国民人気も高いガルマは、ザビ家のアイドルのような存在です。
兄妹に追いつこうと手柄を焦ったガルマですが、ガルマには赫赫(かくかく)たる武勲など不要でした。エゴの強い一族の緩衝材として調整役を果たしつつ、ザビ家のイメージアップに努めることが彼にしかできない仕事だったと思われます。
彼が生きているだけで、大きく歴史は変わったでしょう。
ガルマが死ななければ、国葬もなく、ギレンによるあの伝説的な戦意高揚演説もありません。
そしてやがて来る戦後には、総帥ギレンではなく国民人気が高くクリーンなイメージのガルマが、デギン公王の後継者に指名される可能性は十分にありえます。ザビ家は影からガルマを操るのです。多くの戦争犯罪を犯したザビ家が戦後も権力を維持し続けるためには、これが最も合理的な判断だと思われます。
ガルマには生まれつき備わった名家のお坊ちゃんらしい鷹揚さがあります。ただそこにいることで、一族の不和を和らげ、決定的な分裂を防ぐことができたはず。周囲が盛り立ててあげたくなるようなガルマの優しさ、甘さ、育ちの良さこそが彼の本当の価値だったのではないでしょうか。
ガルマ自身にとっては不本意かもしれませんが、彼はジオンのアイドルであることが最大の役割で、それは一族の他の誰にもできない大切な仕事だったのです。
(レトロ@長谷部 耕平)