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富野監督の「焦り」があった? 早過ぎた名作『聖戦士ダンバイン』が歩んだ苦難の道

『聖戦士ダンバイン』誕生から40年。日本にファンタジーという概念が定着する前に放送された本作は、早過ぎた名作と後年に評価されています。早過ぎた理由、それはある名作アニメの存在がありました。

時代を先取りし過ぎた異世界モノの原典

主人公のショウ・ザマらが描かれた『聖戦士ダンバイン』 Blu-ray BOX I(バンダイビジュアル)
主人公のショウ・ザマらが描かれた『聖戦士ダンバイン』 Blu-ray BOX I(バンダイビジュアル)

 本日2月5日は1983年にTVアニメ『聖戦士ダンバイン』が放送開始した日。今年は放送から40年目にあたります。それまでのロボットアニメではなかった世界観を持つ革新的な作品でしたが、それゆえに人気面で苦戦を強いられることになりました。

 本作『ダンバイン』の舞台となるのは異世界である「バイストン・ウェル」。中世ヨーロッパを思わせる世界観に、妖精や巨大な獣たちが住んでいます。現在の感覚なら当たり前となった異世界モノですが、作品発表当時はまだ馴染みの薄い世界でした。

 おそらく、こういった異世界観は日本ではRPG(ロール・プレイング・ゲーム)で一般的になったと考えられますが、ファミコンが発売されたのはこの年の7月15日。パソコンゲームのRPGでもっとも古参の人気作品である『ウィザードリィ』ですら、1981年9月にリリースしたものの、日本語版発売は1985年まで待たねばなりませんでした。

 つまりファンタジーというものに対してまったく知識のなかった日本人に、いきなりその世界観を提示し、さらにロボットアニメにしてしまうのですから、富野由悠季総監督のアイディアは一歩、二歩どころでなく見えないほどまで先に進んでいたのでしょう。

 しかし、この先見の明には富野監督の焦りがあったとも言われています。それには宮崎駿監督がアニメ雑誌「アニメージュ」1982年2月号からマンガ連載を開始した『風の谷のナウシカ』の存在がありました。『ナウシカ』はもともとアニメ企画でしたが、連載作品でなければ難しいという判断によりマンガから始まった経緯があります。

 この『ナウシカ』よりも先にアニメにしたいという富野監督の目論見があったそうで、本格的な異世界モノとして初の作品となる本作『ダンバイン』が生まれました。たいてい初めての世界観を持つ作品というものは勘違いなどありがちですが、現在の目から見てもバイストン・ウェルの世界観は秀逸で、異世界ファンタジーの元祖にして指針となるものに仕上がっています。

 そういった経緯からか、放送当時よりも現在の方が『ダンバイン』の評価は高いのではないか? そう思わせるほど現在の評価は高いものがあります。もっとも当時の評価がそれほど低いというわけではありません。むしろ『ダンバイン』という作品は、人気作としてアニメ雑誌の中心にいました。

 問題だったのは当時の環境です。1982年に放送開始した『超時空要塞マクロス』が盛り上がりを見せ、『装甲騎兵ボトムズ』、『超時空世紀オーガス』、『機甲創世記モスピーダ』、『銀河漂流バイファム』といった作品が名を連ねる1983年は、「ロボットアニメ戦国時代」とも言える状態でした。

 それぞれの作品が現代でも商品展開されるような根強い固定ファンがいる作品で、ロボットアニメの生産過多だった時代と言えるかもしれません。こういった作品群のなかにあって、人気がないわけではないが扱いがあまり大きくないということになりました。この点から昨今の『ダンバイン』再評価は、ようやく時代が追いついたと言ってもいいのかもしれません。

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