『バースデー・ワンダーランド』原恵一監督インタビュー 目指すのは”日本にない新鮮さ”
個人的に好きな水中世界の魅力、作品で膨らませる

ーーチィおばさん(声:杏)やアカネが巨大な鯉や金魚の背中に乗って、水中を移動していく様子は、躍動感のある楽しいシーン。『河童のクゥと夏休み』でも、主人公の少年と河童のクゥが一緒に川を泳ぐシーンが印象に残っています。水中を描くことに思い入れがあるのでしょうか。
今回はファンタジーの世界を描くということもあって、現実ではありえない設定として考えたものです。水族館に行くと、「巨大なアクアリウムの中に入って泳いでみたい」と思う人もいるんじゃないのかな、それで巨大な錦鯉や金魚に乗れたら、楽しいんじゃないのかな? と。現実では不可能なことがファンタジーの世界なら、可能になるわけです。みんなもやってみたくなるだろうなぁ、と思いながら作ったシーンですね。
ーー原監督は中学2年のとき、水泳部に所属していたそうですね。そういった少年期の体験も反映されているのでしょうか?
確かに中学のときは水泳部で、ずっとプールで泳いでいました。水の世界は個人的に好きですね。水の中に差す光線だとか、水の中の眺めだとか。それに水中っていちばん身近な異世界だと思うんです。とは言っても中学時代は部活で練習に明け暮れていましたから、「水の世界が好きだ」とかは特別意識はしていません。
大人になって日本各地や海外を旅して、スノーケリングをやるようになってからのほうが大きいでしょうね。水の中の世界には惹かれるものがあります。そんな想いを作品の中で膨らませている感じです。
ーーアカネは思ったことを口にできない内気な性格でしたが、異世界を冒険することで少しずつ前向きな性格に変わっていく。ロードムービーとしての見どころですね。
そうですね。とても小さな変化だと思うんです。でも、その小さな変化を自然な形でお客さんに感じてもらうことが、今回の大きなテーマではありました。アカネのささやかな成長に、どれだけの説得力を持たせることができるかがカギでしたね。