【金ロー】『サマーウォーズ』に細田監督が込めた『ハウルの動く城』への「返歌」とは
劇場公開から10年が経った『サマーウォーズ』ですが、高校生の健二がわずか3日間で目覚ましく成長する青春映画としてエバーグリーンな輝きを放っています。細田守監督の代表作である『サマーウォーズ』には、かつて細田氏が監督し、途中降板させられたスタジオジブリの『ハウルの動く城』に通ずる、監督の思いが込められていたのです。
細田監督とスタジオジブリの、因縁深い関係

細田守監督の長編アニメ『サマーウォーズ』(2009年)が、7月19日(金)21:00から日本テレビ系「金曜ロードSHOW!」で放送されます。高校生の健二や夏希たちのいる現実世界と、バーチャル世界とを連動させた脚本家・奥寺佐渡子さんの巧みなストーリー展開、多彩なアバターたちが行き交う仮想空間「OZ」のポップなデザイン設定もあり、何度見直しても楽しめる作品となっています。
細田監督は『サマーウォーズ』に続いて、『おおかみこどもの雨と雪』(2012年)、『バケモノの子』(2015年)も大ヒットさせ、“ポスト宮崎駿”と呼ばれるようになります。すでに多くの人が論じている細田監督の人気作『サマーウォーズ』ですが、そこには、宮崎駿監督作として2004年に公開された『ハウルの動く城』との関係性が見てとれるのです。
英国のファンタジー作家ダイアナ・ウィン・ジョーンズの児童小説『魔法使いハウルと火の悪魔』を原作にしたスタジオジブリ製作の『ハウルの動く城』と、バーチャルの世界をモチーフにした細田監督のオリジナル作品『サマーウォーズ』は、テイストのまったく異なる作品です。しかし、両作品にはいくつかの共通点を見つけることができます。
いちばん大きな共通点は、どちらの作品も“家族”をテーマにしているということです。ファンの間では有名なエピソードですが、細田監督は大学卒業時にスタジオジブリの研修生採用試験を受け、宮崎監督からその才能を評価されながらも採用は見送られました。その後、細田監督は東映アニメーション在籍時にジブリ製作の『ハウルの動く城』に初の外部監督として呼ばれますが、「途中降板」という苦渋を味わうはめになります。
大きな挫折を体験した細田監督ですが、豊かな才能と誠実な人柄を人々は放っておきませんでした。『時をかける少女』(2006年)でブレイクを果たした細田監督は、次回作『サマーウォーズ』の企画時に夫人との結婚を控え、夫人の実家のある信州へあいさつに向かったそうです。新しい家族に温かく迎え入れられた細田監督の感動が、『サマーウォーズ』には投影されていたのです。