宮崎駿監督の「やめるやめる詐欺」の真意とは? 『もののけ姫』が最終作だった可能性も
これまでに『風の谷のナウシカ』『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』など、数多くの名作を作り、最新作『君たちはどう生きるか』を2023年7月14日に公開した宮崎駿監督は、過去に何度も「引退」をほのめかす発言がありました。どのような引退宣言があり、どのような背景があったのでしょうか。
ネット上で架空の「引退宣言」が出回った過去も

宮崎駿監督によるスタジオジブリの最新作『君たちはどう生きるか』が2023年7月14日、全国の映画館で公開されました。宮崎監督による作品は、2013年7月20日に公開された『風立ちぬ』以来、10年ぶりです。実は前作の『風立ちぬ』の公開直後、宮崎監督は記者会見の場で社長を通じ「長編映画製作からの引退」を発表していました。しかし2017年には鈴木秀夫プロデューサーが「宮崎監督が新作長編の準備に入った」(日刊スポーツ 2022年12月13日付)と明かし、監督業を続行していたことを示唆していたのです。
宮崎駿監督の「引退宣言」からの「撤回」は今回が初めてではありません。どうして宮崎監督は引退宣言と撤回を繰り返すのでしょうか。
最初に引退宣言をしたのは『もののけ姫』が公開されたばかりのころ。1997年10月1日に発行された「TECH WIN 10月号別冊/VIDEO DOO! vol.1」に収録されたインタビューのなかで、「ぼくはもう、一人の個人としてはだいたい先が見えたなという感じになってます。(中略)アニメーションだけやって「あーっ忙しい」とか「クソーッ」とか言いながら死ぬのイヤですから。だから、ちょっと道楽をさせてもらいたい」と、「引退」について語っていました。
このように「引退宣言」は25年以上も前から宮崎監督の口から語られているのです。宮崎監督はその後も『千と千尋の神隠し』(2001年)、『崖の上のポニョ』(2008年)の完成後や制作中に「体力的にも最後の長編になる」となどのコメントを残し、引退を示唆する発言を残していました。
そして2013年に『風立ちぬ』が公開されると、記者会見の場において「これを最後に宮崎は長編映画から引退する」という内容が、スタジオジブリの星野社長(当時)から発表されたのです。その後引退会見が行われ、宮崎監督本人が「僕の長編アニメーションの時代は終わった」と発言し、長編アニメから引退することを明言しました。
宮崎監督は何度も引退宣言と撤回を繰り返すため、一部のファンからは「やめるやめる詐欺」と呼ばれるようになりました。過去にはウソの引退発言がネット上に出回り、テレビ局もそれを事実かのように報じてしまう事態も発生しています。
しかしSNS上では、「創作意欲が湧き出てくるんだろう。すごい人だ」「ここまできたら、とことんやってほしい」など、宮崎監督の引退撤回に肯定的な意見も多くあがっています。