お子様にはちと早い『機動戦士ガンダム』小説版 アムロ死亡に富野監督も大後悔…!?
おなじみ『機動戦士ガンダム』には、富野監督による小説(ノベライズ)版もあるのですが、その内容はアニメとは大きく異なっています。どのような違いがあるのか改めて確認してみました。
続編に繋がらない最終決戦の行方

1979年4月にTV放送が開始された『機動戦士ガンダム』には、富野由悠季監督(当時は富野喜幸名義)による小説(ノベライズ)版があることをご存知でしょうか。
1979年から1981年にかけ朝日ソノラマから刊行された小説版のストーリーは、アニメをそのままなぞったものではなく、同じ『ガンダム』という題材を扱った別作品といっても過言ではありません。その最も大きな違いは、主人公であるアムロ・レイの顛末です。
アニメ版では、宇宙要塞ア・バオア・クーを舞台に地球連邦軍とジオン公国軍の最終決戦が繰り広げられ、そのなかでアムロは宿敵のシャア・アズナブルとの一騎打ちを経て一年戦争を生き延びますが、小説版ではシャアの部下の攻撃を受けて戦死してしまいます。
同じく富野監督の小説版『機動戦士Zガンダム』(1985年、1986年、講談社刊)や、小説版『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン』(1988年、角川スニーカー文庫刊)などにおいて、アムロは生存して登場するので、続編として見た場合に整合性がありません。
同じ小説版でありながら次作に繋がらない内容となったことに対し、執筆した富野監督は「慙愧(ざんき)の念にとらわれる」と語っていることが、その後再版された角川文庫(現、角川スニーカー文庫)版の第III巻あとがきにて確認できます。
また小説版は宇宙でのみ話が展開され、アニメ版での地球を舞台にしたエピソードが割愛されています。
そうしたなかでも、アニメ版では第6話「ガルマ出撃す」から第10話「ガルマ散る」まで、地球でのエピソードに登場する重要人物であり、シャアの学友でもあるガルマ・ザビは、小説版でも変わらずに出番があります。
ただ、彼は最終的に死を迎えるのですが、アニメ版のようにシャアに追い詰められてのものではありません。アムロたちの乗る宇宙戦艦のペガサス(アニメ版のホワイトベース)に無謀な特攻をかけて返り討ちに遭うという展開で、シャアは彼の突撃を制止する立場でした。
ほかにも、アニメ版ではアムロと直接の面識を持ち、敵であるジオン軍の士官ながら理解のある大人として描かれたランバ・ラルは、小説版では最後まで面識がないまま物語が終了します。

そうしたなかでも一番の驚きは、シャアの妹であるセイラ・マスとアムロが男女の関係で結ばれることです。アムロはセイラのことを以前より「金髪さん」として見知っており、やりとりをかわすうちに親密な関係になっていきました。
セイラとの関係以外でも、小説版にのみ登場するジオン軍の女性パイロットであるクスコ・アルとも男女関係を結ぶチャンスを考えるなど、小説版ではアムロのリビドーが弾けています。対してアニメ版のアムロは女性を意識することはあっても、誰とも結ばれることはありませんでした。これには、アニメ版のアムロは15歳、小説版では19歳と設定されていることも関係するでしょう。
ここまで見てきたものを含め、小説版『機動戦士ガンダム』は、アニメの雰囲気を残しながらひと味変わった作品となっています。この機会にアニメ版との違いを見比べながら一読してみてはいかがでしょうか。
(LUIS FIELD)