観たら『金カム』の世界観がより楽しめる邦画3選 日露戦争の悲惨さを描く『二百三高地』ほか
野田サトル氏のベストセラーマンガを原作にした、実写映画『ゴールデンカムイ』が公開中です。主人公の杉元は日露戦争からの帰還兵で、北海道の雪山で人喰い熊と戦い、網走監獄からの脱獄囚の刺青にヒントが隠された莫大なアイヌの金塊を探すことになります。そんな「金カム」のハラハラする世界とつながる、お勧めの実写映画を紹介します。
お互いに影響を与え合ってきたマンガと映画
マンガと映画は異なる表現媒体ですが、古くからお互いに影響を与え合ってきた関係にあります。SFマンガ『サイボーグ009』などで知られる漫画家・石ノ森章太郎氏は映画を参考にし、大胆なコマ割りを生み出しています。ハリウッド映画『ミクロの決死圏』(1966年)は、手塚治虫氏の『鉄腕アトム』からインスパイアされたことで有名です。
2024年2月1日に76歳で亡くなった米国の俳優カール・ウェザースさんは、ボクシング映画『ロッキー』(1976年)で主人公ロッキーと戦う絶対王者・アポロを演じて人気を博しました。『ロッキー3』(1982年)ではスランプに陥ったロッキーに、アポロがコーチ役を買って出ます。最大のライバルが最高の仲間になるというこの「黄金則」は、日本の少年マンガに多大な影響を与えています。
1月22日から実写映画『ゴールデンカムイ』が封切られ、公開3週間で興収19億円をあげるヒット作となっています。『ゴールデンカムイ』の原作者・野田サトル氏も、大変な映画マニアとして知られています。実写版『ゴールデンカムイ』の続編が今から待ち遠しいという人向けに、『ゴールデンカムイ』に通じる世界観を持つ実写映画を紹介します。
主題歌「防人の詩」も大ヒットした『二百三高地』
開拓時代の北海道を舞台に、「不死身の杉元」と呼ばれる杉元佐一(山崎賢人)や狂気のカリスマ・鶴見中尉(玉木宏)らが金塊をめぐるサバイバルレースを繰り広げる『ゴールデンカムイ』。時代背景をより詳しく知るために、ぜひ観ておきたいのが戦争映画『二百三高地』(1980年)です。
日本とロシアが戦った日露戦争(1904年~05年)で、最も激戦となったのが中国東北部にある旅順の丘陵地帯「203高地」をめぐる攻防でした。将軍・乃木希典(仲代達矢)率いる日本陸軍は、ロシア軍の要塞を攻め落とそうとしますが、完全防備した上に豊富な火器類を備えたロシア軍に対し、生身での突撃を繰り返すという無謀な戦い方をします。
この戦いで、日本軍の戦死者は1万5400人、戦傷者数4万4000人、ロシア軍の戦死者は1万6000人、戦傷者数3万人にのぼりました。乃木将軍もふたりの息子を戦場で失くしています。辛うじて勝ったとはいえ、日本側の犠牲も計り知れないものがありました。
3時間にわたって日露戦争の顛末を描いた『二百三高地』では、温厚な教師だった小賀(あおい輝彦)が、戦場の過酷さに加え、戦友が次々と亡くなったことから、ロシア兵を憎悪する兵士へと変貌する姿がひときわ印象に残ります。戦争には、優しい人間すら別人に変えてしまう恐ろしさがあります。小賀が生きて帰ってくることを待ち続ける、婚約者の佐知(夏目雅子)が不憫でなりません。
ちなみに『二百三高地』を撮った舛田利雄監督は、劇場アニメ『宇宙戦艦ヤマト』(1977年)や、『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』(1978年)も大ヒットさせています。特撮監督には、東宝の怪獣映画で活躍した中野昭慶氏が起用されています。
また、前半終了時には、さだまさしさんの歌う主題歌「防人の詩」が流れ、映画史上もっとも泣けるインターミッションとなっていました。