勇者一行のビジュアル←変化なしの原因は「フリーレン」? 成長の差に違和感
魔王討伐の旅路を再びたどりながら、フリーレンはかつての仲間たちを思い返します。10年間の旅のなかでヒンメルは16歳の少年から26歳の青年へと成長しましたが、フリーレンの思い出のなかでは変わらない姿を保っています。なぜ勇者一行のビジュアルは変わらないのでしょうか。
ヒンメルの成長過程が描かれないのはフリーレンのせい?
魂が眠るという北の地を目指す旅のなか、フリーレンはたびたび魔王討伐の記憶を追想します。フリーレンの思い出のなかで、ヒンメルたちは年を取らず常に若々しい姿のままですが、よく考えればこれは少し不思議なことです。魔王討伐まで10年の歳月が過ぎました。旅のなかでヒンメルは16歳の少年から26歳の成人男性へと成長していきます。だいぶ風貌も変わったことでしょう。
なぜ作中で彼らは全盛期と、老いた姿しか描かれていないのでしょうか。フリーレンにとっての時間の価値などを踏まえて、振り返ります。
●当時のフリーレンはよく観察していなかった
フリーレンが人間にとって貴重な時間の価値を知ったのは勇者ヒンメルを失ってからのことです。彼女にとって10年はあまりにも短い時間でしたが、限られた時間を生きるヒンメルや僧侶のハイター、戦士であるアイゼンにとっては相当に長い時間だといえます。
年齢を重ねるごとに1年が短く感じるようになった、という経験がある人は多いのではないでしょうか。19世紀のフランスの哲学者、ポール・ジャネーが発案した「ジャネーの法則」では「人生のある時期に感じる時間の長さは年齢の逆数に比例する」とされています。
この法則に従えば76歳で没したヒンメルにとって、旅の10年は人生の7.6分の1に相当しますが、1000年を生きるフリーレンにとっては人生のわずか100分の1でしかありません。体感時間の長さが10倍以上も違うのです。まさに彼女がヒンメルの葬儀の時に発言したように「たった10年一緒に旅をしただけ」なのです。
そのため当時のフリーレンはヒンメルたちの日々の変化を見逃しており、よく観察していなかった可能性があります。だから全盛期の姿と再会した時の姿しか記憶していなかったのかもしれません。