『機動戦士ガンダム』なぜジオンは「公国」なの? 王がいない国に公爵がいる理由
アニメ『機動戦士ガンダム』に登場する「ジオン公国」の「公国」とは、字義どおりに考えるなら「貴族、特に公爵を元首とした国家」のことです。しかし、前身となるのは共和国で、貴族はいないはずです。どういうことなのでしょうか。
そもそも「公国」って何?
「ジオン公国」は、アニメ『機動戦士ガンダム』に登場する地球連邦軍の敵対国家です。英語表記は「Principality of Zeon」で、「Principality」とは「大公が主権を持つ公国」という意味になります。
かつては「Zion Dukedom」だったのですが、「Dukedom」だと「公爵領」で「自治権を持つ」という意味合いが弱いことから、「Principality」に変更されたようです。「Zion」も、欧米においてイスラエルの地名「Sion」を連想させ、ユダヤ人の民族国家建設運動も「Zionism」であることから、誤解を避けるために「Zeon」に変更されたという説があります。
さておき「公国」とは「公爵を元首とした国家」です。「Principality」なので大公という意味もあります。たとえばモナコ公国の元首は「大公」で、これを現す単語はフランス語の「prince」であるものの、「大公国」ではなく「公国」です。ジオン公国の統治者は「公爵」より格上のニュアンスがありそうな「公王」ですから、大公統治のような意味の「公国」なのでしょう。
さて、大公であれ公王であれ「公」とは「国王に任じられる位」であり、公国とは「王より格下の公が統治している地域」という意味合いとなります。実際、モナコ公国は、大公の任命前にフランス政府に相談しますし、国務大臣にフランス人も就任できますから、フランスとは上下関係にあります。
では「ジオン公国」の公王である「デギン・ソド・ザビ」は、誰に任じられて「ジオン公王」となったのでしょう。また、わざわざ普通の王より格下に見える「公王」になったのには、どういった理由があるのでしょうか。
ジオンの建国者は「ジオン・ズム・ダイクン」で、彼はサイド3の首相に就任し、建国したのは「ジオン共和国」です。共和国の首相が、王の与える爵位である「公爵」を授けられるとは思えませんし、そもそもダイクンは暗殺されたか、もしくは病気で急死したのですから、彼がデギンをそのような地位に任命できる立場にあっても、できたとは思えません。
実際、ダイクンの死後にデギンが就任したのは「2代目首相」で、その後で公王に即位しました。とはいえザビ家のミネバは「姫」として扱われ、宇宙世紀に身分制度は明白にあります。これはどう解釈したらいいのでしょうか。
推理してみましょう。違和感を感じるのは、ジオン共和国首相令嬢であるはずの「アルテイシア(セイラ)」も「姫様」と呼ばれていたことです。