「まて~ぃ ルパーン!」銭形警部役・納谷悟朗氏の命日。繰り返し説いた演技の心構え
「声優」である以前に「俳優」である

さて、現役時代の納谷氏と言えば、「声優である以前に俳優である」というポリシーを持つことで知られていました。
アニメ関係の仕事でインタビューを受ける際にも「声優という呼び方は許さない」と発言することがしばしばで、声優と呼ばれたときには怒って取材を断ったというエピソードもあります。
これは声優という仕事を見下しているからではありません。かつてインタビューに答えた納谷氏は、「ただ声を当てればいいと思っている声優が多すぎる。目の前に客がいると思っていない」と述べ、声優の仕事だけをしていると、演技の幅が狭くなることを憂いていたようです。実際に最近のオーディションでは「萌え声」なしの演技を要求された参加者が、何もできずに固まってしまう事例も発生しているそうで、残念ながら納谷氏の懸念は現実のものとなってしまいました。
納谷氏は声優に対しても「舞台経験があったほうが良いですね。台本を読み込む力がつく
」と、舞台の経験を推奨しており、実際に舞台に立ちたがっている若手声優を積極的に支援していたそうです。ただし演技への姿勢は大変に厳しく、演技指導中にバットを持っていたのを目撃されています。
この記事を書くにあたり、改めて声優としての納谷氏の足跡をたどってみましたが、さまざまなジャンルで一貫して俳優として活動していた納谷氏の活動はあまりにも膨大で、とても書ききれませんでした。弟の納谷六朗氏も同じく俳優・声優の道に進みましたが、納谷氏が亡くなった翌年、82歳で他界しています。
また足跡をたどるなかで、かつて何度かTV放送され、筆者も見た記憶がある映画『アラモ』の吹き替え版が未だに発売されていないことが分かりました。この作品で納谷氏は主人公デイビー・クロケット大佐を演じるジョン・ウェインの声を当てています。他にも大塚周夫氏、広川太一郎氏、富山敬氏など、既に亡くなられた名優たちが重要な役どころで名を連ねています。いつかまた往年の名作を、懐かしい名優たちが演じる声で観てみたいと、切に願っています。
(早川清一朗)




