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「急だな」「納得いかん」の声も多い『アナ雪』ハンスの”設定” 観返すと分かる恐ろしい「伏線」とは

『アナと雪の女王』は世界中で愛され続ける名作である一方で、「悪役が本性を見せる様があまりに唐突」という批判も出ています。しかし「そうなる理由」は劇中でしっかり描かれており、初登場時の振る舞いや、他キャラクターの対比、さらに監督の言葉からも納得できることもあったのです。

乗っている「馬」にも注目?

アニメ映画『アナと雪の女王』ポスタービジュアル (C)2013 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
アニメ映画『アナと雪の女王』ポスタービジュアル (C)2013 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

※この記事では『アナと雪の女王』のネタバレに触れています。

 2024年11月29日の「金曜ロードショー」で、『アナと雪の女王』が放送されます。世界中で愛され続ける名作ですが、「悪役が本性を見せる様があまりに唐突」「脚本の都合上、無理やり悪役にされた感がある」といった不満の声もよく聞きます。

 確かに、終盤で悪役と判明する「ハンス王子」は、「実は悪い人かも?」と思わせる、分かりやすい伏線がもう少しだけでもあったほうがよかったとは思うものの、実は「そうなる」理由は劇中でしっかり描かれており、監督の言葉からも納得できることもあったのです。

●初登場時から「礼儀があだとなる」ことが示されている

 後にアナを愛していなかったことが分かるハンス王子は、パッと見では絵に描いたような「白馬の王子様」です。しかし、そのハンスの初登場時では、乗っていた馬が、歌いながら走っていたアナにぶつかり、彼女を小舟へと放り出してしまっています。

 さらに気になるのは、この時のハンスの「礼儀」を、馬が「倣(なら)っている」ことです。馬は初めこそ前脚でアナの乗っていた小舟を押さえつけていたのですが、アナ自身が王女であることを告げると、ハンスはすぐさま膝をついて「失礼しました」と謝り、それを見た馬もお辞儀をして前脚が浮き上がったために、小舟がバランスを崩してしまいます。

 さらに、アナが立ち去る際にもハンスは手を広げて見送るのですが、馬もまた前脚をあげたため、ついに小舟はひっくり返り、ハンスは海へと落ちてしまいます。

 つまり、この一連のシーンは「王子様然とした礼儀があだとなる」ことを示している、もっといえばハンスの「本心は隠した上での表面的なだけの礼儀」を皮肉ったシーンにも見えるのです。

●相棒に「アテレコ」もしていたクリストフとの対比

 そのハンスの危うさがはっきりと示されたのは、「出会ったその日にアナと婚約しようとした」ことでした。氷運びを営む「クリストフ」は、その婚約に応えたアナに「知らない奴には気をつけなきゃダメだよ」「君のやることは信用できない。出会ったばかりで結婚するようなやつだぞ」などと、もっともな批判をしています。

 そして、そのクリフトフと相棒のトナカイ「スヴェン」との関係も、ハンスとその馬とは対照的です。たとえば、クリストフはオオカミに追いかけられながらも、アナを放り投げてスヴェンに乗せて、ガケを飛び越え危機を脱し、そのアナに引っ張られて助けられます。アナはソリと荷物を台無しにしたこともあって「もう私のことは助けてくれなくていいから」と告げました。

 クリストフはその際に、スヴェンのセリフを「アテレコ」しています。「あの子(アナ)ひとりだけだと死んじゃうよ」「そしたら新しいソリ買ってもらえなくなっちゃう」などの言葉に、「イヤなこと言うなあ、お前」と返し、「フフッ」と笑ってアナについていくのです。

 この場面ではクリストフは「相棒との相談の上」「自分の利益のために」という建前を示しつつも、実は利害を超えて、アナの助けになろうとしているということが伝わります。前述したように、自身の礼儀を見せつけて、それをただ倣っている(しかも乗せていたアナを見捨てて走り去ったこともあった)ハンスの馬とは、正反対ともいえるでしょう。

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