『孔雀王』萩野真氏の一周忌 何度も練習した「臨兵闘者皆陣列在前」を思い出す
宗教マンガの立役者に

連載開始直後から高い人気を誇った『孔雀王』は、単行本発売時にもエピソードを残しています。1巻の印刷部数は5万部だったのですが、販売開始数時間で売り切れてしまい、萩野氏は単行本が書店に並んでいないと勘違いしてしまったそうです。
そうして連載開始から3年後、順調に人気を獲得していた『孔雀王』は三上博史&ユン・ピョウのダブル主演で劇場映画化を果たします。今思い返すと日本映画というよりも香港映画のテイストが強く、三上氏よりもユン・ピョウの格闘アクションが強く印象に残っている気がします。
さらには1988年から1991年にかけて3本のOVAが製作され、孔雀の声優を関俊彦さんが務めています。関さんは最近でも『鬼滅の刃』の鬼舞辻無惨役を演じており、実力派声優として活躍を続けておられるのがうれしいところです。
1989年にはいったん連載は終了してしまいますが、1990年から1992年にかけて続編となる『孔雀王 退魔聖伝』を連載、退魔聖伝の終了後は『夜叉鴉』『小類人』『拳銃神』『怨霊侍』などホラー、オカルト、SF、ガンアクションなど多様なテーマの作品を執筆し続けました。
しばらく空白期間が空いた『孔雀王』ですが2006年に第三部『孔雀王 曲神紀』の連載が開始。2012年には掲載誌を変え「月刊!スピリッツ」で『孔雀王ライジング』、「コミック乱ツインズ 戦国武将列伝」で、『孔雀王 戦国転生』の同時連載を敢行、2019年に完結を迎えました。
『孔雀王』がマンガ界に与えた影響は大きく、1980年代後半には宗教をモチーフにした作品が一大ブームを起こします。菊池としを先生の『明王伝レイ』や、永久保貴一先生の『カルラ舞う!』など、数え上げれば枚挙にいとまがありません。
今思い返すとひとつ残念だったのが、この時代はそれほどアニメの本数が多くはなく、深夜アニメも一般的ではなかったことです。今のようにアニメが大量に製作されている時代であれば、TVアニメ『孔雀王』を目にすることも可能だったかもしれません。仮に今から作られたとしても、それを萩野先生が見ることはできないのは残念です。
そして萩野先生、かわいいかわいい阿修羅を世に送り出してくださり、ありがとうございました。
(早川清一朗)