「問題点」も面白い衝撃アニメ映画 「オマージュ露骨すぎ」「んな訳あるか」
新海誠作品っぽいけれど

●『ねらわれた学園』
2012年に公開された『ねらわれた学園』は、過去に実写ドラマや映画化もされた眉村卓さんの同名小説のアニメ映画化作品で、オリジナル要素が強めの内容です。メインに据えられているのは中学生たちの「四角関係」で、その少年少女の恋愛や、美麗な風景描写、SF設定などから、新海誠監督作品を思い浮かべる方も多いでしょう。
実際に、桜の花びらがたくさん落ちる光景や、ヒロインのひとりの趣味がサーフィンであることなど、2007年の『秒速5センチメートル』から影響を受けたと思われるポイントもありました。
謎めいた転校生の「京極リョウイチ(CV:小野大輔)」には「エヴァンゲリオン」シリーズの「渚カヲル」を連想させる耽美な魅力がありますし、偶然にも本作の1週間後に公開された『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』のように、彼が「ピアノを弾く」場面もあります。
同じく、クラシックな青春SF小説をアニメ映画にして高評価を得た2006年の『時をかける少女』にならった企画だとも納得できるのですが……残念ながら本作のストーリーはかなりの難があり、特に終盤では矢継ぎ早に錯綜した展開が続くため「ついていけない」「わけが分からない」ことになっていました。
「学校で携帯が没収される」ことを発端にした、学園内が何者かに乗っ取られるサスペンス要素が中心にあるはずなのですが、それがコミュニケーションにおける哲学的な問答や、4人の恋愛関係の外に漠然と存在しているような扱いで、結局は中途半端に放り出してしまった印象を持ってしまいます。
困惑したのは、主人公の「関ケンジ(CV:本城雄太郎)」が「プールの授業から水着姿のまま会議にやってきて、その股間の水着から携帯を取り出して投げて、それを見た女の子たちが失神してしまう」という場面で、これをどのように感じればいいかさっぱり分かりません。
肝心の恋愛要素も、いくら素直になれないからといってケンジを「チカン」「変態」などとなじり、大きく吹っ飛ばすほどのビンタをするほどに粗暴なヒロインの「涼浦ナツキ(CV:渡辺麻友)」に感情移入できない人は多いでしょう。
とはいえ、メインの恋愛に関わる心理描写はちゃんとしていますし、かわいいデザインのキャラクターたち、よく動く丁寧な作画、湘南の美しい光景、深読みができる設定の数々、渡辺麻友さんが本職の声優と遜色のない名演をしているといった魅力も大いにあります。複数の要素を観客を混乱させないように物語に落とし込むことは、実はとても難しいという学びも得られるでしょう。
●『好きでも嫌いなあまのじゃく』
Netflixで2024年に配信開始された『好きでも嫌いなあまのじゃく』は、原作のない完全オリジナル作品なのですが、多くの人が連想したのは2023年公開の『すずめの戸締まり』です。男女ふたりのロードムービーであることを筆頭に、優しい人たちと交流したり、旅館に泊まったり、ときには働いたりすることも共通点を見出せるでしょう。
しかし、こちらも残念ながらストーリーに難があり、設定や展開の飲み込みづらさは厳しいものがありました。特に冒頭の「化け物が来てベランダからあわてて逃げ出し、そのまま遠いと分かっている場所まで、家出同然の少女とともに冒険を始める」という流れが大きな問題です。
小学生くらいの年齢の子供だったらまだ納得できたとしても、主人公の少年「柊(CV:小野賢章)」は高校1年生であり、「いくらなんでも無計画すぎる」「一度家に帰って準備とかしないの?」と、ツッコまざるを得ないのです。
そして、目的地である「隠の郷(なばりのさと)」での出来事は、もはや意味不明です。抽象的な表現が多い上に、「何が問題なのか」という根本の部分の説得力がなく、どういうことに危機感を持てばいいのかさえも分からず、話に入り込めません。
たとえば、劇中の「鬼」と人間の違いは「ツノが生えている」ことくらいしかない上に、「普通の人にはツノが見えない」らしいので、「なぜ鬼が人から隠れて暮らさなければならないか」が不明です。また、異なる世界との行き来や、隠の郷にいるおばあちゃんのキャラクターが、露骨なまでに『千と千尋の神隠し』に似ているのには苦笑いしてしまいました。
一方で、確かな美点は『ペンギン・ハイウェイ』で知られるスタジオコロリドの滑らかで丁寧な作画と、ヒロイン「ツムギ(CV:富田美憂)」の愛らしさです。
隠の郷の美術も作り込まれていて「本当にありそう」と思える舞台立てでしたし、山形の実在の場所が映るご当地映画でもあるので「聖地巡礼」をしたくなる魅力もあります。何より、これまで広い世界を知らなかったツムギが、さまざまな人との交流の数々により成長していく過程は素直に楽しめました。
(ヒナタカ)

